天体望遠鏡の使い方｜初心者向けの何も見えないときのコツも！見えない理由は？

天体望遠鏡は、月や惑星・星空を満喫するのに便利な優れたアイテムです。肉眼では見えない星の姿を知れば、宇宙をより身近に感じられます。近年ではコスパのいいモデルが販売されており、小学生の理科の教材やアウトドア用としても気軽に購入できるようになりました。

一方で、天体望遠鏡を使ってみたくても「操作が難しそう」「使い方がわからない」といったイメージを持つ方も多いです。また、購入して「何も見えない」と不安になる人もいます。実際に天体望遠鏡はすぐに使えるものではないため、ピントの合わせ方など観測前の準備や練習が必要です。

そこで今回は、天体望遠鏡の種類や使い方、何も見えないときのコツや見えない理由など、初心者にも分かりやすく解説します。中学の義務教育で使い方を習った方も、改めて天体望遠鏡の使い方をおさらいしましょう。人気の天体望遠鏡もご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね。

あらかじめ主要なパーツとそれぞれの役割を把握しておけば、天体望遠鏡の使い方も分かりやすくなります。簡単な表にまとめましたので、どのようなパーツがあるのか見ておきましょう。

屈折式は、対物レンズで光を屈折させて観測する天体望遠鏡です。一般的なイメージの天体望遠鏡で、鏡筒の形状が細長いのが特徴です。使い方も構造もシンプルで初心者の方でも使用しやすくなっています。

コントラストがよく視界が安定しやすいため、月や惑星をはじめ星団・星雲なども観測できます。ビギナーからベテランまで、1台あると便利な天体望遠鏡です。

反射式は、筒底の凸面鏡で反射させた光を集めて観測する天体望遠鏡です。鏡の反射を利用しているため、天体が明るくはっきり見えます。星雲・星団などの淡く暗い天体の観測にも優れています。

外気と鏡筒内部に温度差がある場合は、像が不安定になりやすいので慣らす時間が必要です。性能のいいモデルも比較的手頃な価格で購入できるので、手間なく安定して観測したい方は高性能のものを選びましょう。

カタディオプトリック式は、レンズと鏡を組み合わせて集光する天体望遠鏡です。軽量・小型で持ち運びやすく、高倍率時にも明るく細密に観測できます。

鏡筒が短く太いのが特徴で、使用前には外気温に慣らす時間が必要です。使い方が複雑で価格も高いのがデメリットですが、高性能なので天体観測に慣れた中級以上の方はぜひ検討してみてください。

天体望遠鏡の架台は「経緯台」と「赤道儀」の2種類があります。構造や使い方が異なるので、観測の目的や自分のレベルに合った架台を選ぶと観測しやすくなります。

経緯台は、上下・左右に調節して使う架台です。初心者にも扱いやすく、シンプルな構造なので組み立ても簡単にできます。比較的軽量なので、持ち運び用としても適します。微調整ができないので高倍率で星を追いかけるのには向きませんが、気軽に星を見たい人や初心者の方にとって試しやすいものです。

赤道儀は、天体の動きに合わせて角度を自動調節する架台です。地球の自転に合わせて星を追尾するので、高倍率や長時間の観測にも便利です。使い方にコツがいるので練習して慣れる必要がありますが、しっかり勉強したい方や太陽の観測もしたい方はぜひ試してみてください。

天体望遠鏡は非常に視野が狭いためファインダーと呼ばれる道具が有用です。初心者にはのぞき穴ファインダーがおすすめで、このタイプなら難しい操作はいらず子どもでも使いやすいです。 一方で光学ファインダー（低倍率・小型な望遠鏡タイプのファインダー）は、肉眼では見にくい暗い星なども探しやすいメリットがありますが、手動での操作を行う必要があります。

初めに、水平で安定した場所を選んで三脚を組み立てます。高さ調節ネジを回してそれぞれの脚を適切な長さに合わせます。天体望遠鏡を乗せたときに転倒しないようにネジをしっかり閉め、三脚の開き止めをしっかり開いておきましょう。

次に、組み立てた三脚に鏡筒を固定します。鏡筒を取り付けるときは、架台についている固定用のネジを緩めてから行います。天体望遠鏡は精密機材なので、落ちないように固定用ネジがしっかり締まっているか確認してください。鏡筒を固定したら接眼レンズを取り付けましょう。

鏡筒を固定した位置によっては角度が勝手に動いてしまいます。全体のバランスを見て、必要であれば鏡筒の位置を調節しましょう。このとき、鏡筒バンドについている調節ネジを緩め、少しずつスライドさせるのがコツです。

観測したい天体を見つけ出し,、天体望遠鏡の視野に入れる操作を「導入」といいます。高倍率で星を見つけるのは難しいので、天体望遠鏡を使用するときは「ファインダー」を使用して天体の位置を探します。ここではファインダーの使い方や合わせ方のコツを解説します。

目的の天体を正確に導入するためには、ファインダーの調節が必要不可欠です。何も見えない理由のひとつに、ファインダーを調節していないことがよくあります。ファインダーの中心に見える観測物と、アイピースから見える観測物が一致するように調節しておきましょう。夜に星を使って調節するのは困難なので、日中に行うのがポイントです。

まず、低倍率のアイピースを使って、1キロメートル以上離れた建物や鉄塔などに合わせましょう。次に、ファインダーの光軸調節ねじを回して、対象物が十字線の中心に来るように合わせます。光軸調節ネジの使い方は説明書にも記載があるので、使用前に確認しておくとスムーズに操作できます。

ファインダー調節ができたら、観測物をファインダーの中心にとらえます。次に、天体望遠鏡本体のピントを合わせましょう。少しでもピントがずれると、アイピースを覗いたときに「天体がぼやける」「何も見えない」「真っ暗」な状態になり上手く観測できません。

ピントを合わせるときは、ピント調節ネジをゆっくり回して行うのがポイントです。天体がクリアに見えてきたら、一番合う位置を探して微調整しましょう。この時に光軸ネジを動かすと、ファインダーの調整がずれてしまうので気を付けましょう。また、太陽を観察するときには必ず遮光版を使い、直接見ないようにしてください。

天体観測の準備ができたら、実際に天体望遠鏡で観測してみましょう。まず、ガイドブックなどの本や星座早見表などを使って、天体の位置と方角を確認します。次に、最も低倍率のアイピースをセットし、ファインダーの視野の中心に天体を導入します。

必ず低倍率から徐々に倍率を上げていくようにしましょう。また、双眼鏡を使った方が肉眼で見るよりも天体を見つけやすいので、あらかじめ双眼鏡でおおよその位置を把握しておくのも観測しやすくなるコツです。

天体を導入したらアイピースを覗き、目的の天体が視界の中心に来るようにゆっくり微調整します。最後に、天体がはっきり見えるようにピントを合わせましょう。

天体の位置は、地球の自転に合わせて1時間に15°変化します。ガイドブックなどでもおおよその位置は確認できますが、遠くの星や暗く淡い星団などは観測が難しいため経験や操作技術が必要になります。

一方で、肉眼でも見つけられる月や火星などは、初心者でも観測しやすいです。また、月は50倍以上、土星や金星は150倍以上など、観測に必要な倍率は地球と天体の距離によって異なります。以下に各天体の観測に必要な倍率を表のまとめています。天体に合わせて適正な倍率で観測しましょう。

安全に天体観測を行うために、明るいうちに観測場所を決めておきましょう。周囲が明るいと観測しにくくなるため、街頭の灯りや街灯りが少ない開けた場所が見やすいポイントです。また、山中で観測するときには野生動物に、道路がある場所では車に十分気をつけてください。

天体観測を行うときには、明るいうちから準備をしておく必要があります。日の入りや日の出の時刻、どのような天体が見られるのかを事前にチェックしておくとスムーズに観測できます。また、ファインダーの調節も昼間のうちに行う必要があるので、時間に余裕をもって準備しておきましょう。

天体観測するときは暗闇に目を慣れさせてから行います。観測場所に到着したら安全な範囲で懐中電灯を消し、10分ほど明かりを見ずに目を慣らしましょう。また、月以外の天体を見る場合は、月明かりがあると観測しづらいです。観測には空が明るくならない月のない日を選ぶと星が見やすくなります。

天体観測をするときには防寒対策が必要です。夏場でも予想以上に冷えるケースもあるので、念のため防寒着を用意しておくようにしましょう。

また、屋外での観測時には椅子やレジャーシート、虫よけスプレーなども準備しておくと便利です。星座早見表やコンパスなども忘れずに持参しましょう。

天体望遠鏡は精密機械なので熱や衝撃には十分気をつけましょう。使用後のお手入れはホコリや汚れだけを落とし、傷つけないのが基本です。また、保管にあたっては寒暖の差が小さく、カビの発生を防ぐために風通しのいい場所を選びましょう。

使用後は以下のお手入れを行なってから保管しましょう。

• 必ず鏡筒にキャッブをする
• レンズのほこりは拭き取らずに、エアダスターで吹き飛ばす
• レンズに指紋や汚れが付いたときは、市販のクリーニング液とクリーニングペーパーで軽く丁寧に拭き取る

指紋の油分は放置すると取れにくくなります。すぐに対処しましょう。特に精密に調整されているレンズは、決して自分で分解してはいけません。また、鏡筒はレンズより比較的キズにも強いですが、強力クリーナーやツヤ出し剤は使用できないので注意してください。

使い方についていまひとつ分からない場合は、購入した天体望遠鏡のメーカーのサイトで使い方を調べるのもおすすめです。ケンコー・トキナーやビクセンなどのメーカーが公開しているホームページには、天体望遠鏡の種類・基礎知識や基本の使い方などを初心者にも分かりやすく解説しています。メーカーや機種を問わず共通している部分もあるので、とても参考になります。

初心者の方で簡単なものがいい方は、経緯台タイプの屈折式天体望遠鏡を試してみてください。シンプルな構造の屈折式は、使い方やお手入れも簡単で初心者でも比較的扱いやすいです。

また、経緯台は軽量なので、天体望遠鏡の設置に慣れていない方でも簡単に組み立てできます。ほとんどの入門者用セットは経緯台・屈折式の組み合わせなので、コスパのいいモデルも手に入りやすいです。

中～上級者の方なら、屈折式やカタディオプトリック式の天体望遠鏡にチャレンジしてみてください。所持している天体望遠鏡と異なるタイプや、より高性能なスペックの高いモデルを選ぶと観測の幅が一層広がります。

架台には、細やかな調節ができる赤道儀を選べば高度な観測が可能です。初心者には扱いにくい組み合わせですが、操作に慣れていればさらに観測の楽しみも広がるのでぜひ挑戦してみてくださいね。

小学生が自分専用で使うなら、安定感のある小型タイプの天体望遠鏡が使いやすいです。子供用のコンパクトモデルや卓上モデルも販売されており、比較的安価なのでプレゼント用としても人気があります。

シンプルな屈折式・経緯台タイプの天体望遠鏡ならファミリーで楽しむ場合にも手軽に使えます。お子様が使用するときには、必ず大人が見守りましょう。

家庭用の天体望遠鏡は、1万円前後～20万円以上のものまでさまざまです。高価になるほどスペックも高くなりますが、初心者には取り扱いが難しいです。一方で、1万円以下の天体望遠鏡は、ほとんどがトイ系モデルになってしまい、本格的な天体観測はできません。

初めて天体望遠鏡を使う方は、4万円前後のモデルを選ぶと比較的に失敗が少ないです。また、入門者用のセットもコスパが良くて便利です。スペックが物足りなくなったら、ワンランク上のモデルを検討してください。

自動導入は、淡くて暗い星団や星雲などの高難度な天体観測に便利な機能です。あらかじめ基準となる星（北極星や季節を代表する星）を導入すると、自動で観測したい天体の方角に焦点を合わせます。

自動追尾は、地球の自転に合わせて自動で天体を追尾する機能です。地球から見た星の位置は1時間で15°動くので、長時間の観測や天体追尾撮影(時間をかけて星を点の状態で撮影する方法)などに便利です。

自動導入・自動追尾は使い方がやや複雑で、使いこなすには天体望遠鏡の操作技術や天体の知識が必要になります。また、高価なモデルが多いので、しっかり勉強したい方や中級者以上の方向けと言えます。

天体観測をしながら撮影もしたい場合には、カメラやスマホを固定できるアダプタ付きの天体望遠鏡が便利です。撮影方法や使用するカメラによってアダプタの種類も変わるので、対応するモデルを選びましょう。

天体望遠鏡にカメラを装着する方法は、大きく分けて2種類あります。1つ目は接眼レンズにカメラを装着する方法、2つ目は鏡筒に一眼レフカメラを連結させる方法です。撮影方法に合わせて後からアダプタを追加できるモデルもあるので、購入前にチェックするようにしてください。

天体望遠鏡を持ち出して使うなら、小型・軽量型のモデルが便利です。登山やキャンプなど屋外での使用がメインになるなら、総重量10キログラム以下の天体望遠鏡を選びましょう。

また、パーツが分解できる組み立て式の天体望遠鏡も、収納・持ち運びしやすく手軽に利用できます。初心者でも使い方が分かりやすく、工具なしで組み立て可能なモデルもあるので、徒歩や自転車で持ち運びをする方は検討してください。

今回ご紹介したように、自分に合った天体望遠鏡を使えば、初心者でも気軽に観測が楽しめます。天体望遠鏡のパーツや使い方などを覚えて、いろいろな天体を観測してみましょう。自分にとってベストな天体望遠鏡を見つけて、満天の星空を楽しんでくださいね。