顕微鏡の種類を徹底解説｜光学顕微鏡と電子顕微鏡の違いも

虫めがねから始まり、顕微鏡で動植物を観察した経験がある人も多くいます。顕微鏡は、光を当てて2点を認識する分解能が重要です。光学顕微鏡では可視光の波長から理論上は200nmが分解能の限界と言われており、製品としては1500倍程の光学顕微鏡が多いです。

より小さいものを観察する場合は、電子顕微鏡を用います。電子顕微鏡は試料を透過又は反射した電子線を捕捉し、高い分解能で観察できます。細胞の内部構造やウィルスの観察も可能です。

光学顕微鏡には、試料を下から観察する倒立顕微鏡や立体的に観察できる双眼実体顕微鏡など、多くの種類があります。この記事では、顕微鏡の種類を詳しく解説します。電子顕微鏡の種類や構造についても紹介するので、ぜひチェックしてください。

ここから紹介する光学顕微鏡の種類について、特徴と主な観察対象を簡単な一覧表にまとめました。

双眼実体顕微鏡は、10~20倍と低倍率であるものの観察対象を立体的に観察できます。左右の光路が別々に構成されているため、両眼で立体的に観察できる仕組みです。

双眼実体顕微鏡は対物レンズとステージまでの距離が他の顕微鏡に比べて離れているため、昆虫などを生きたまま観察・解剖しながらの観察も可能です。水の入ったシャーレを使って水生昆虫も観察できます。

明視野顕微鏡は明視野観察とも言われ、最も一般的な観察方法です。試料を透過した光を見て観察します。細胞や染色体まで観察できますが、無色透明の標本は透過光では観察できないため、染色してから観察するのが通常です。

細胞や細菌を染色して観察・分類する手法は古くから確立されており、医学や生物学分野で多く利用されています。

偏光顕微鏡は、明視野顕微鏡と対物レンズや接眼レンズの構造は同じです。光源に偏光板を付け、振動方向が一定の光を試料にあて、人の目では見えない偏光特性を輝度や色の違いで見分けられます。

偏光顕微鏡を使うと、岩石や高分子素材、結晶構造などの偏光特性を観察できます。見た目では分からない岩石の同定や高分子素材の研究にも使用されています。

明視野顕微鏡では、組織や細胞を固定してから染色するため、生細胞を観察できず、微細構造も変化する場合が多いところが問題でした。位相差顕微鏡では、標本を染色せず観察可能であるため、生細胞の観察や臨床検査に多く使用されています。

位相差顕微鏡は、試料に当たって回折した光と試料に当たらず透過した光の差をコントラストとして観察する顕微鏡です。試料の境界がコントラストとして観察できます。

微分干渉顕微鏡も位相差顕微鏡と同様、無色透明の試料を生きたまま観察できます。試料の厚みをコントラストとして映し出し、厚さ数100μmの試料まで観察が可能です。

微分干渉顕微鏡は、明視野顕微鏡に微分干渉プリズムを加えた構造です。プリズムにより一方向に整列した偏光が試料を通過する際、厚みの差が光路の差となります。試料の反対側のプリズムを通る際に光路差が干渉し、厚みをコントラストとして映し出します。

ここから紹介する特殊な光学顕微鏡の種類について、特徴と主な観察対象を簡単な一覧表にまとめました。

構造化照明顕微鏡は、細かい縞模様の光を試料に当てる構造化照明を利用します。異なる角度の構造化照明を当てた画像を重ねると、モアレ縞と呼ばれる一方向の光からは得られない画像を得られる原理を応用した顕微鏡です。

分解能が2倍まで向上したため、従来電子顕微鏡でしか観察できなかった細胞内の微細構造まで観察可能になりました。

多光子励起顕微鏡は、本来1つの光子しか入らない空間に2つの光子を吸収させ、蛍光を励起します。自然界では低い確率で起こりますが、フェムト秒超短パルスレーザーを対物レンズを通して照射し、焦点付近において高確率で2光子吸収が起きます。

生体組織をよく透過する近赤外レーザーを用いて、神経細胞の活動や血流の観察も可能になりました。

屈折率の異なる物質に対して斜めに光を当てると、入射光が屈折せずにすべて反射する全反射と呼ばれる現象が起きます。全反射する点の反対側では、「エバネッセント光」が形成されます。

全反射蛍光顕微鏡では、カバーガラスと油浸オイルの間で全反射を起こし、試料側にエバネッセント光を形成し、励起光として蛍光を発生させます。

レーザー顕微鏡は、波長が短く直進性の高いレーザー光を試料に照射します。通常の光学顕微鏡と比較すると、散乱光の少ない反射光が得られるため、コントラストの高い画像が得られます。

高さ方向に移動しながら2次元走査を繰り返すため、表面形状すべてにピントのあった高いコントラストの画像が得られます。

蛍光顕微鏡は、試料に可視光や紫外領域の光をあてて励起した蛍光を暗視野で観察します。特異的な染色や、蛍光タンパク質の遺伝子を組み込む方法により、特定遺伝子の発現を観察するなど、分子生物学分野でも幅広く使用されています。

透過型電子顕微鏡は、試料に電子線をあてて、透過した電子を観察します。試料の内部構造により透過する電子線に差が出るため、透過型電子顕微鏡は内部構造を映し出す電子顕微鏡です。

走査型電子顕微鏡は、試料に電子線をあて、反射した電子から得られる像を観察します。電子線をずらしながら当てるため、走査型とよばれます。表面の形状や表面付近の内部構造を観察できる電子顕微鏡です。

これまで紹介してきた顕微鏡以外にも、紫外線顕微鏡・赤外線顕微鏡・超音波顕微鏡など、さまざまな顕微鏡があります。波長の短い紫外線を使うと、くっきりと映し出せます。基盤など、目に見えない異常を検知するのにも使用されます。

赤外線顕微鏡や超音波顕微鏡は、試料を破壊せずに内部を観察できます。表面からはわからない異常を検知するのにも使用されています。

生物顕微鏡は構造では明視野顕微鏡が多いです。生体の組織切片・細胞・細菌を透過光によって観察します。複数の対物レンズを持ち、油浸レンズを使えば最大1500倍程度まで拡大が可能です。

金属顕微鏡は対物レンズ側に照明があるため、反射光を使って観察します。金属表面や半導体など、光を透過しないものの観察に使用されます。さまざまなフィルターがあるため、金属組織をはじめとして観察の幅が広いのが特徴です。

実体顕微鏡は双眼である場合が多く、昆虫などを立体的に観察できます。ステージから対物レンズまでの距離が長いので、解剖などの作業を立体的に観察しながら使用できます。時計や電子機器等の微細な部品の検査や組立て作業にも利用されます。

正立顕微鏡は、対物レンズがステージの上側についているのが特徴です。一般的に顕微鏡といえば正立顕微鏡を指すのが通常です。

プレパラートを観察する場合、対物レンズをカバーガラスぎりぎりまで近づけられるため、正立顕微鏡を使用して観察します。

倒立顕微鏡は対物レンズがステージの下側についており、下から観察する顕微鏡です。培養細胞を観察する場合、培養液に浸かったまま観察する必要があります。正立顕微鏡だと対物レンズが培養液についてしまうため、倒立顕微鏡を使用して観察します。

マイクロマニピュレーターを付けて人工授精に使用したり、培養細胞を観察する必要のある再生医療分野などでも使用されたりします。

小学校の理科の授業では、植物や昆虫など生物の観察が多く行われます。目でよく観察し、虫めがねでも拡大しますがプレパラートを作って観察する明視野顕微鏡も授業で使用されます。倍率はそこまで高くなく、コンパクトで持ち運びしやすい顕微鏡が使用されます。

中学校の理科の授業では、明視野顕微鏡や双眼実体顕微鏡がよく使われます。双眼実体顕微鏡は対物レンズとステージの間に距離があるため、解剖でも使用されます。

組織や細胞を観察する際には、プレパラートを作成し、明視野顕微鏡を使って観察します。小学校よりは高倍率の顕微鏡を使用する場合もあります。

高校でも双眼実体顕微鏡や明視野顕微鏡を使用します。解剖や組織の染色を実施し、明視野顕微鏡を使った観察やスケッチを行う授業が多いです。学校や授業にもよりますが、油浸レンズを使ってかなり高倍率の観察を行う場合もあります。

光学顕微鏡の種類や電子顕微鏡についても紹介しました。光学顕微鏡といっても古くから使われている顕微鏡から、光学分野の研究を応用した最新の顕微鏡までさまざまな種類があります。自宅で使用する場合は大掛かりなものは不向きですが、購入する場合は観察対象によくあったものを選びましょう。