庄野潤三の小説おすすめ13選！芥川賞受賞から夫婦の晩年シリーズまで｜口コミ付き

庄野潤三が妻と共に晩年過ごした「山の上の家」が美しい写真入りで刊行され、多くの人からの支持を得ました。家族との何気ない日常を描き、自身の子どもから孫までの成長記録のような小説は、身近に感じられ絵空事ではない文章が受け入れられています。

夫婦愛や親子愛、時にぶつかりすれ違う家族、どこにでもありそうな出来事を温かく赤裸々に描いています。日々を忙殺されつつある人々の心が潤うような庄野潤三作品は、世界でも比類ない家族の記録小説を紡いだ作家として、今またとても注目を浴びています。

この記事では、庄野潤三が作家としてデビューした若かりし頃の目線から、結婚、子育て、老後と自身の時代背景が作品に描き込まれ、読者からの共感を得られている様子もあわせてご紹介します。

庄野潤三が本格的に執筆活動を始めたのは、結婚し家族を持ってからだと言われています。こちらでは、庄野潤三のプロフィールや親兄弟、潤三自身の家族のことなどを3つの項目に分けてご紹介していきます。

庄野潤三は1921年大阪に生まれました。九州大学法文学部にて東洋史を専攻していましたが、戦時中だったため、特例措置適用で繰り上げ卒業しています。父親は、帝塚山学院初代学院長の庄野貞一、兄は児童文学者の庄野英二です。弟の庄野至はエッセイストで、織田作之助賞を受賞しています。

1946年に結婚し翌年には長女も生まれています。戦争の終わりと共に同人誌などに小説を発表していましたが、結婚を機に本格的に小説家の道を歩み始めました。

庄野潤三は1946年に結婚してから2男1女に恵まれ、明るく楽しい、幸せな家庭生活を送っています。東京練馬区に移転してから作家業が順調だったので、子どもたちを自然豊かな土地でのびのびと育てるために神奈川県生田の丘陵に1964年に家を建て家族5人で暮らし始めました。

そこでの暮らし、日常生活を綴った小説を本格的にっ執筆し、多くの書籍を刊行しました。「山の上の家」を訪れる人とのかかわりも家族小説に登場しています。

庄野潤三には3人の子どもがいます。結婚後翌年に長女、その後長男次男と生まれ5人家族となりました。子どもたちは「山の上の家」でのびのびと育ちました。その子どもたちの成長過程の姿を通して、日々の何気ない出来事を小説の題材としています。

もちろん物語の主人公や登場人物のモデルは、潤三の子どもたちや自分自身、知人などでほとんどが実際にあった出来事となっています。

庄野潤三の小説の題材となっている家族。その家族の物語的小説は、庄野潤三が若い父親だったときと、おじいちゃんになってからに分かれています。それぞれの代表作を3作ずつに分けてご紹介します。さらに文学賞受賞の作品2選の、計8選をご紹介します。

庄野潤三が子どもたちと過ごしている日常をテーマに、父親だからこそ気付く子どもの成長過程での微妙な変化や、潤三自身が子どもたちとのかかわりの中で感じる心情の機微を描いていて人気のある作品3作をご紹介します。

大阪から東京の田舎に引っ越してきた家族の物語です。家族構成も土地の背景も、庄野潤三の実生活そのものと言っても過言ではない小説です。

昭和30年代の平凡な家族の何気ない日常を、温かいまなざしで見つめ描いた庄野潤三の姿が垣間見える作品になっています。子どもたちの日常が、屈託ない笑顔に包まれている様子に、読者の心まで温かくなるようです。

一組の夫婦と3人の子ども、5人家族の平凡で、豊かではないが温かく楽しい日常が綴られている作品集です。父親と子どもと子どもの友人たちとの関わりや、母親の作る料理の話など。そして庭の木、その庭に訪れる小鳥などの情景を丁寧に描き紡いでいます。

普通の暮らしがこんなにも素晴らしいのかと、羨ましく感じる程、優しさに溢れた家族小説の短編集です。

庄野潤三の長女に対する愛情が溢れんばかりに感じる著書です。長女に対しての文書ではなく、長女からの手紙から、その手紙に家族への愛情が、潤三に負けず劣らず溢れているのです。

結婚後に離れた場所（足柄山）に暮らしている長女との書簡のやり取りをベースに、物語風に執筆しています。庄野潤三の小説家のとしての思議な手腕に親近感すら覚える書籍です。

「山の上の家」で暮らして50年超、その間に子が育ち結婚し巣立って行き、やがて孫を連れて訪れる、と絵にかいたような幸せな老後を送った庄野潤三。愛する家族と孫たちを愛情のこもった文体で執筆した作品の中から、3作品を選んでご紹介します。

けい子ちゃんは、庄野潤三の孫です。それぞれに結婚した子どもたちも近所に住み、孫とのかかわりも頻繁にある庄野潤三の覚書とも取れるような小説です。

他人の生活の様子を垣間見るのは、興味がわきづらいと感じがちですが、そこが庄野潤三の作家としての筆力なのか、読んでいるうちに一緒に日々を過ごしているような幸せな気分まで味わえます。不思議ですらある小説です。

庄野潤三の「山の上の家」のすぐ下に住んでいる次男の娘フーちゃん（文子）が、一日に何度も訪れる程、行き来を頻繁にしている日常を、まるで目に見えるように詳細に書いてあります。

住まいは別にしていても家族が互いを思い、その思いの詰まった愛情を受けて育っていく孫の姿と日常の些細な事柄を愉快に綴っているエッセイのような小説です。

孫と妻の会話のやり取りから付けられた表題「貝がらと海の音」です。こちらは、庄野潤三夫妻の晩年シリーズの一作目と言われ、シリーズとされる父親目線時代と祖父目線時代そして、晩年の孫やご近所とのかかわりを綴った作品類に分けられます。

晩年シリーズは誰もが憧れるような老後を描いた作品が多く、今なお読者を魅了し続けています。

庄野潤三作品のイメージが、温かな家族の物語だとしたら、ここでご紹介する作品は少し趣向が違うかもしれません。芥川賞作品と新潮社文学賞作品、さらに庄野潤三らしい家族の風景を描いた文学作品のご紹介をします。

プールサイド小景は昭和29年12月号の『群像』に掲載された短編小説で家族にとっての幸福の危うさを描いた作品で、第32回芥川賞を受賞しています。

新潮社文学賞を受賞した静物も、昭和35年6月号の『群像』に発表された小説です。庄野潤三作品らしくテーマは家族となっており、父親と姉兄弟で構成されたエピソードを断片的に組み合わせた形となっています。

読売文学賞小説賞を受賞した「夕べの雲」は、庄野潤三が練馬の家から神奈川県生田の遮るものが何もないような丘陵に「山の上の家」を建て暮らし始めたころの、家族を守ろうとする姿や意志を描いた作品です。

庄野潤三の小説はエッセイのような要素もあるのですが、そこにとどまらず小説として成り立つ文章力には驚かされます。文学賞小説賞を受賞が納得の著作品です。

庄野潤三が50年超過ごし続けた家族の思い出、小説の題材の生まれた場所として「山の上の家」が一般に公開され、訪れる人が後を絶たないほど人気を得ています。子どもたちも結婚し家を出ても、近所に住んで行き来も頻繁な生活は、多くの人の憧れとなっています。

少し離れた場所に住む長女との書簡のやり取りなども、心温まる家族の在り方の見本のようです。親子でありながらも、礼節をわきまえおたがいを思いやる交流は、見習いたいと思えるほどです。

心のままに温かい目で見つめ描き続けた庄野潤三の小説は、家族の子どもたちや孫との日常や、愛した家「山の上の家」を訪れる人々との関わりを詳細で柔らかなタッチで描いています。庄野潤三作品を読んで懐かしく温かな気持ちになりませんか。

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