樋口毅宏のおすすめ作品10選｜どんな小説家？代表作や読みたい作品の選び方も紹介！

樋口毅宏は、サブカル要素が強くコアなファンも多い小説界のタランティーノともいわれる作家です。バイオレンスや過激な性描写をテーマにハードボイルドな作品などを次々と世に送り出しています。

映画や小説作品へのパスティーシュを取り込み、斬新な手法で読者を虜にする作品は、いくつもの賞の候補になるなど注目度が高い小説家です。その一方で突如イクメンとなって育児日記を刊行したり、2016年には著作の帯上で作家引退を表明したりするなどファンを驚かせました。

今回はそんな樋口毅宏の話題作の中からおすすめの作品をご紹介します。著者の作品の魅力や口コミを参考に、ぜひお気に入りの作品を見つけてください。

樋口毅宏は、東京都豊島区雑司ヶ谷生まれの小説家です。帝京大学文学部を卒業後、出版社勤務を経て2009年に『さらば雑司ヶ谷』で小説家デビューとなります。幼少期は、当時の子どもたちの共通項であった『少年ジャンプ』に連載のドラゴンボールや北斗の拳など、漫画に親しみました。

また、中学時代からは小説家の星新一から始まり、その後は角川春樹の世界観に影響を受けます。2015年に弁護士でタレントの三輪記子（みわふさこ）とツイッターによる出会いにて結婚、現在は二児の父親でもあります。

樋口毅宏作品の魅力は、ぐいぐいと引き込まれていく文章とそのテンポにあります。また、作者自身が体験をしてきた文化的体験を小説の形で表現しつつ、エロ・グロ・バイオレンス満載の内容を尋常ではない描写で施したものが樋口作品の魅力とも言えます。

一方で結婚当初は作者が家で家事をするイクメンになり、忙しい日々を送るなか、育児日記『おっぱいがほしい！』を刊行します。さらに父親同士の不倫の恋を描いた異色作『東京パパ友ラブストーリー』は、読みやすさが重視されています。また、読者の心に残るストーリー構成も樋口作品の魅力の一つです。

サブカルチャーとはメインンカルチャーではないもの、です。日本のメインカルチャーは浮世絵とか歌舞伎などを表し、サブカルチャーは映画やアニメ、ゲームなど最近の大衆文化を言います。

樋口毅宏作品では、音楽だけでなく映画・文学・プロレス・テレビなどサブカルチャーを盛り込んだコラムが楽しめます。また『さよなら小沢健二 完全保存版! サブカルクソ野郎の人生全コラム』では、自他ともに認める“サブカルクソ野郎"の作者が、小沢健二など懐かしいワードを含ませながら荒唐無稽なストーリーを展開しています。

暴力と官能が満載のバイオレンス小説は、普段出くわすことのない非日常の世界へと読み手を引き込みます。樋口毅宏作品では、バイオレンスやエロスなどをテーマにハードボイルドな世界を突っ走ってきた作者ならではのエッジが効いた作風が楽しめます。

『さらば雑司ヶ谷』は定型に収まらない独創的なストーリーでエンターテインメントとしてレベルが高い作品です。本書のキャッチの一部「エロスとバイオレンスが炸裂し、タランティーノを彷彿とさせる引用に満ちた21世紀最強の問題作」との表現通り、奇想天外な独創性が堪能できます。

作者がすべての家事をこなしながら、育児にいそしんでいる抱腹絶倒のエッセイは、子育てのリアルと妻との関係、あけすけな子育ての真実が描いてあります。

また、同じ保育園に子どもを通わせるパパ同士の恋愛を題材にした『東京パパ友ラブストーリー』では、描写がリアルで同性同士の恋愛がうまく表現されています。子育てのなかに芽生えた恋愛物語を楽しんでみてください。

フィクションとノンフィクションが絶妙に入り混じったリアルを凌駕する作者の新しいプロレス作品。事実を上手くフィクションと融合させプロレスの知識がある方はもちろん、プロレスを知らない方でも気軽に読めるライトな作風です。

プロレスラーの力道山が実名で描かれており、アントニオ猪木や長州力、前田日明ら有名レスラーを連想させるキャラクターも多く登場します。近年では「プ女子」と呼ばれるプロレス好きの女性も増えてきているため、男性だけではなく女性にも読んで欲しい作品です。

『民宿雪国』は、2011年に山本周五郎賞候補、山田風太郎賞候補に選出されています。日本海に面した新潟県の寂れた民宿雪国を舞台に国民的画家、丹生雄武郎の謎に包まれた生涯を描くピカレスク小説です。

フィクションでありながらノンフィクションを読んでいるような錯覚に陥ってしまうそのストーリーは、あらゆる意味で過剰、破天荒、予測不能で期待した展開が何度も何度も裏切られます。隠された昭和史を炙り出した誰もが想像もつかないラストへと読者を導きます。

『東京パパ友ラブストーリー』は、同じ保育園に子どもを通わせているパパ同士が恋に落ちるという衝撃的な物語です。自分の仕事が、ほぼ休業状態でワンオペ育児をしている建築士・鐘山明人とファンドマネージメント会社の社長、有馬豪の対照的な家庭を持つ2人のラブストーリー。

不倫という地獄の釜の蓋が開いた修羅場のシーンは臨場感があり、ある意味、描かれている女性たちのほうが強烈な印象を残します。しかしこの作品は男同士の恋愛がうまく表現されており村上春樹の作風を思わせるような登場人物のモノローグを挟む描写が作品の質を高めています。

『ドルフィン・ソングを救え！』は、作家の林真理子や会社員でエッセイストの燃え殻が樋口毅宏の才能を認めた作者の会心作です。林真理子は「めちゃくちゃの面白さ。私たちの80年代をこんなにもてあそんでいいのか！この天才野郎！」と本書の推薦コメントを書いています。

45歳独身で結婚経験なし、子どもなしのフリーター・トリコが睡眠薬で自殺を図ります。意識を取り戻すも、そこは30年前の渋谷。青春時代に好きだったバンドの解散を阻止すべく、奔走するトリコのタイムスリップ、パラレルワールドストーリーです。この時代の文化に興味のある方にもおすすめの作品です。

樋口毅宏が伊集院光へ向けたコラム「わがままおしゃべりデブへ告ぐ」が特別寄稿として、雑誌『実話BUNKAタブー』にて掲載されています。

ラジオ界の王者として君臨している伊集院光がMCを務める朝のラジオ番組が30年有余で終了。樋口毅宏はこのラジオのヘビーリスナーであったため、『実話BUNKAタブー』へのコラム寄稿が実現しました。ラジオを聞いていた方はもちろん、2人に興味のある方はぜひ、読んでみてください。

窪 美澄は、女性の生と性を真摯に描く作品が人気の小説家です。これを書いちゃいけない、とのタブー意識が逆に性の在り方を仄暗いものとして受けとられることを懸念しており、描写が尋常ではない作品も手掛ける点が、樋口毅宏と似ている側面を持ちます。

2009年『ミクマリ』で、女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』で山本周五郎賞を受賞しており『晴天の迷いクジラ』では、山田風太郎賞受賞。熟成された文章と冷静さのなかに、温かみのある世界観を持っています。樋口毅宏の作品が好きな方にはおすすめの小説です。

大量のオマージュとサブカル要素がつまった文章が魅力の樋口毅宏の作品。そのマニアックさと斬新な手法により著者は、文学界の最終兵器とも言われています。今回の記事を参考にぜひ、自分に合った樋口毅宏作品を楽しんでみてください。

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