北杜夫の小説おすすめ8選｜医師や歌人の家系図？代表作品も一覧で紹介！

北杜夫は「どくとるマンボウ」の愛称で親しまれています。その「どくとるマンボウ」の日常を題材にし、シリーズで書かれたエッセイが大変人気があり、60年以上も前に出版されたにもかかわらず今でも読まれ続けています。

医者の家系に生まれ自身も医者であるから”どくとる”を名乗り、マンボウは海でぷかぷかと浮かんでいる姿が”怠け者の魚”のイメージで気に入り、自身のエッセイに「どくとるマンボウ」と使ったのです。

北杜夫はペンネームであり、医学生として過ごした宮城県仙台市の、東北、杜の都から付けたそうです。児童書や童話も作品の中にあるので、子どもからも親しみやすくペンネームの北杜夫より「どくとるマンボウ」が浸透しているのかもしれません。

ユーモラスな小説やエッセイが有名ですが、純文学から児童書、童話やファンタジーと作品の幅があり、SF短編小説も出しています。その背景は「星新一」に対抗したのだとか、しかしその後「小松左京」が現れ、SFではかなわないので断念したと語っていたそうです。

とても明るくユーモアの多く詰まったエッセイを執筆したかと思うと、少し暗くシリアスな小説を発表し、芥川賞を受賞する作品まで書ける北杜夫は、簡単には説明しがたい作家のひとりと言えます。

どくとるマンボウの愛称のとおり、北杜夫は医者でもあります。精神科医として山梨県内の県立病院に一年間勤務しその後、水産庁の漁業調査船に船医としてインド洋から欧州にかけて航海しました。この体験が後のエッセイの題材となったのです。

北杜夫（斎藤宗吉）の家系は、祖父が医師で政治家の「斎藤紀一氏」。杜夫の父は、紀一氏の養子で医師であり歌人の「斎藤茂吉氏」です。兄の「斎藤茂太氏」もやはり精神科医でエッセイストです。さらに娘の「斎藤由香」もエッセイストとして活躍しています。

北杜夫は自身の体験に基ずくエッセイ「どくとるマンボウ」シリーズや、幼少期の自分と家族をデフォルメし小説として発表した作品などとても多くの著昨がありますが、代表作と言われている5作品をご紹介します。

• 『どくとるマンボウ航海記』
• 『どくとるマンボウ青春記』
• 『僕のおじさん』
• 『幽霊ー或る幼年と青春の物語』
• 『楡家の人びと』

「どくとるマンボウ航海記」は、北杜夫が水産庁の漁業調査船に船医として乗っていた時、寄港先での失敗談など、ユーモアの中に批評も織り交ぜて執筆した旅行記です。5か月間船医として世界を回遊した若き北杜夫の、伸びやかな感性で書かれた爽やかな作品です。

時が経っていても色あせなく、笑いながら旅行気分を味わえるおすすめの一冊です。

タイトルの通り、青春真っ盛りの頃の話題が詰まっています。1967年6月～1968年3月まで『婦人公論』にて連載されていたものに、書きおろしも加えて刊行されたのです。北杜夫が戦後の混乱期の大変な生活の中でも、若者らしいハチャメチャな学生時代のようすが描かれていて、痛快で懐かしいような感覚も覚える作品です。

「僕のおじさん」は、2016年に『松田龍平』主演で映画TVドラマ化されています。北杜夫が医師のインターンをしていたころに、無給で生活ができないため、兄の「斎藤茂太」の家に居候しており、その日々の生活状況をベースに脚色執筆したものです。

呑気でおおらかな良き昭和の雰囲気が伝わり、ユーモアに溢れている作品です。

記憶が過去と未来を行ったり来たり、まるで幽霊のように脳内で記憶の断片が漂っている。幼い少年時代から高校生の青春時代と、心が感じたままを綴られている、ピュアで透明感のある文章です。

北杜夫作品らしく、ユーモラスな語り口調も随所にみられ、読みやすい作品となっています。自然を細かく描写し主人公と一緒にいるように感じる作品です。

楡家の人びとは、斎藤家の人びとでもあるといっても過言ではないです。実際に北杜夫の生家である「斎藤病院」を、主人公は北杜夫の父『斎藤茂吉』をモデルにして書かれた作品です。

叔父や叔母、書生など登場人物が多く少し戸惑うところもありますが全体的に分かりやすい文章です。3部に分かれるほどの長編ですが、飽きずに読み切れ引き込まれてしまいます。

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狐狸庵とは、北杜夫としばしば対談をし丁々発止で笑いを誘っていた『遠藤周作』です。お互いに歯に衣着せぬ物言いをする仲であり、時々仲がいいのか悪いのかわからないところもあるほどです。

いたずら好きな遠藤周作が、北杜夫宅の玄関先に掲げてあった「狂犬注意」の看板を「狂人注意」と書き換えた逸話もあります。笑いを誘うエッセイからシリアスな小説まで書き、文壇を引っ張っていた『遠藤周作』と『北杜夫』はある意味、似たタイプの作家と言えるのかもしれません。

北杜夫の小説及びエッセイを称して「笑いの文学」と語った人がいたのですが、まさしくそのとおり！特に「どくとるマンボウ」シリーズは笑わずに読み終えるのが難しいと思います。クスッと笑えて癒される北杜夫の著作に浸ってみませんか。

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