【口コミあり】 辻邦生の小説おすすめ8選｜『廻廊にて』『夏の砦』など名作を紹介

小説家でフランス文学者でもあった辻邦生。小川国夫や加賀乙彦とともに”73年三羽烏”と称えられたほど、数々の賞を受けた活躍ぶりでした。辻邦生の繊細かつ独自の世界観に浸り、おすすめの小説を探している方もいるかもしれません。

辻邦生は、気品あふれる美しい文体や情景描写が魅力で、歴史小説や高い芸術を思わせる小説をいくつも執筆しています！文学や芸術以外に、映画や社会などにも深い知識を持っており、エッセイも多く手がけていました。

ここでは、数多くの受賞歴を誇る辻邦生の読みたい小説を選ぶポイントや、おすすめ小説を紹介します。辻邦生の世界観を存分に堪能できる作品を厳選して紹介するので、ぜひ参考にしてください。

辻邦生は、1925年（大正14年）に東京で生まれました。フランス文学者としても名を馳せ、32歳から4年間パリへ留学しています。

滞在中から帰国後にかけて、代表作でありデビュー作でもある『廻廊にて』を始め、『安土往還記』『背教者ユリアヌス』といった歴史小説を発表し、数々の受賞歴を誇る作品を生み出しました。

71歳で大きな交通事故に遭ってしまい、長編小説『定家春秋』の取材旅行や「ゲーテ特集」の原稿依頼を辞退しなければならないほど、執筆が難しい状況に。亡くなる直前まではエッセイをメインに手がけていました。

辻邦生のデビュー作『廻廊にて』は、第4回近代文学賞受賞作です。亡命したロシア人の才能高き女流作家と、身体が弱く生きる意味を模索している少女の交流を描いた作品で、主人公の手記を元に伝記風に仕上がっているのが特徴です。

フランス文学者としても活躍していた辻邦生の高い芸術性を感じたい方におすすめ。孤独を抱える2人のやり取りが、辻邦生特有の端正な文体でとても丁寧に描かれています。時間をおいて再読すると、理解が深まる一冊です。

『安土往還記』は、芸術選奨・毎日芸術・谷崎潤一郎賞の3つの賞を受賞した歴史小説です。読売文学や毎日出版文化の候補作でもあったので、辻邦生の代表作に挙げられます。

本作は織田信長の心情を客観的に描いた作品で、知的さあふれる文体によりじっくり読むのにふさわしい一冊です。臨場感のある描写も特徴なので、織田信長が好きな方を始め、歴史に詳しくない方も楽しめます。

谷崎潤一郎賞受賞作『西行花伝』は、平安時代から鎌倉時代にかけて生きた武士・西行の生涯を書いた歴史小説です。本作も辻邦生らしさが詰まっており、西行と親交のあった人々で、章ごとに語り手を変えて物語が進みます。

西行の恋愛模様が非常に美しく書かれており、歴史ものでありながら恋愛小説も思わせる傑作です。文章中には、ポジティブな気持ちになる言葉もたくさんあるので、気持ちが沈んだときに読むのもおすすめです。

初期の代表作である『夏の砦』は、ヨーロッパに留学後に消息を絶ってしまった日本人女性の手記を元に、生と死・愛をメインに切ない生涯が書かれた小説です。感性の高さが繊細な文体であらわされており、辻邦生の死生観も垣間見えます。

デビュー作『廻廊にて』と雰囲気が似ており、芸術センスの高さを感じる辻邦生作品が読みたい方におすすめです。

辻邦生の短編集が気になるなら『花のレクイエム』がおすすめです。季節ごとの花をモチーフに命にまつわる12の物語が収録されています。繊細な描線が魅力的な銅版画家・山本容子の挿絵も相まって、美しさを感じる小説です。

どれも死にまつわる切ない話ではあるのですが、版画と丁寧な文体により、優しい気持ちになります。読み終わると、エピソードとあわせて版画のお気に入りも見つかるほど、上手くコラボレーションしている傑作といえます。小説で、文学と絵画を堪能したい方にうってつけです。

辻邦生の芸術的な世界観に魅了され、さらに作品を読みたい方は『辻邦生全集』を選びましょう。全20巻からなり、辻邦生の多才さが存分に知られる内容になっています。

辻邦生全集1では、『廻廊にて』『夏の砦』『安土往還記』が収録されており、デビュー作・代表作・受賞作がいっきに楽しめる一冊なのでおすすめです。

辻邦生は、小説以外にエッセイも多数残しています。1990年8月から99年7月の亡くなる直前まで連載していた433回のエッセイは、没後に『辻邦生が見た20世紀末』として出版されているので要チェックです。

芸術や文学に限らず、自然や社会・歴史や平和など多岐にわたるジャンルで、読み進めるごとに辻邦生の優しい人柄が伝わってきます。また、『物語の海へ-辻邦生自作を語る』では、歴史小説の名作『背教者ユリアヌス』『安土往還記』への思いや、振り返りを綴った一冊です。小説とあわせて読むのもおすすめです。

辻邦生は、繊細で美しい文体による歴史小説や、芸術性の高さがうかがえる小説を多数世に送り出しました。切ない話でもどこか優しい気持ちになる作品ばかりなので、ぜひ本記事を参考にお気に入りの一冊を見つけてください。こちらもあわせてご覧ください。