藤田宜永の小説おすすめ14戦｜直木賞受賞の代表作『愛の領分』など多数紹介

藤田宜永は文学賞から推理協会賞受賞、さらに直木賞も受賞している実力派の小説家です。冒険小説やハードボイルドで人気を得ていましたが、複雑な人間関係を描きながらエロティシズムを表現する恋愛小説へと進んでいきました。

小説家の世界に入る手助けをしてくれた母親との軋轢を描いた自伝的小説など、自身の内面を表している作品もあります。短編の名手ともいわれファンもとても多いのですが、惜しくも2020年に帰らぬ人となってしまいました。

今でも藤田宜永の作品は好まれ、読み続けられています。さらに妻である「小池真理子」との共著作のエッセイや、夫との思い出をつづられている本を読んで、新たに藤田宜永の小説を読み始めている方もいます。

藤田宜永は1950年に福井県で生まれました。早稲田大学第一文学部に入学したのですが中退し、フランスに渡りエールフランスで勤務しています。フランスで結婚、妻はフランス人ですが後に離婚し、帰国後1984年に小説家の「小池真理子」と再婚しています。

1980年に帰国してから本格的に執筆活動を始め、エッセイや小説に取り組んでいました。その後1986年に『野望のラビリンス』で文壇デビューを果たしました。

多くの著作がある藤田宜永の小説は、どの作品から読んだらいいのか迷ってしまいます。直木賞をはじめ他の賞に輝いた作品や、映画化・ドラマ化された作品を、ジャンル別に代表作を3作品ずつ選び紹介します。

藤田宜永の小説で、第125回直木賞に輝いた『愛の領分』をはじめ、文学賞や推理小説で賞に輝いた『大雪物語』や『鋼鉄の騎士』をそれぞれ、何年に発表し受賞しているのかをご紹介します。

藤田宜永の小説『愛の領分』は、2001年5月に発行されました。同じく2001年に第125回直木賞を同作で受賞しています。この作品は藤田宜永の恋愛小説代表作と言われてます。

本格的ハードボイルドでデビューし、冒険小説でも賞を取っていましたが、恋愛小説を書き始めてから4年で直木賞に輝く快挙は、さすがと言えます。

戦前の左派運動に挫折し、フランスに渡ってカーレースに魅了されのめりこんでいく主人公。しかし、時代は戦争に向かって進んでいくのです。情報戦と複雑な人間関係に翻弄されながらも、レーサーを目指す青年が描かれています。

「日本推理作家協会賞」と「日本冒険小説協会特別賞」のW受賞を果たした、藤田宜永の代表作の一つです。

北国にしても記録的なほどの大雪に見舞われ、閉ざされた中での6日間に起こった出来事を、6話の連続短編小説で描かれています。舞台となっているのは藤田宜永自身が住まう長野県です。実際に住んでいるからか、リアルな描写に情景が浮かんでくるようです。

読み終わった後に、心がほどけるように思えるのは、雪解けまでもイメージできるからかもしれないです。

活字の世界に浸り、想像で楽しむのもいいのですが、作品をもとに監督や脚本家によって映像化された小説も大変魅力があります。藤田宜永の小説を存分に生かしながら、出演者の演技により一段と魅力を増している作品となっています。

藤田宜永の小説中で最初に映画化されたのが『虜』です。書籍ではエロティシズムなサスペンスになっていますが、映画では監督・脚本によりシニカルでユーモアもある作品となっています。

主演の長塚京三と妻役の大塚寧々が好演しています。周りを雪村いずみ・ミッキーカーチス他で固め、色と欲に絡んだ人間模様を滑稽に描き、映画としても成功した作品となっています。

大学生の主人公が、借金取りに追われ逃げていたはずが、その借金取りと東京の街を散歩します。二人で歩きながらそれぞれの過去に思いをはせながら、不思議な道中を展開していきます。

放送作家としても有名な三木聡監督により2007年11月に公開されています。主な出演者にオダギリジョー・三浦友和・小泉今日子・吉高由里子と人気俳優が揃っています。

生後3日で誘拐された過去を持つ高校生が主人公。誘拐されたが実母の元に戻れて育てられたのだが、なじめず愛情に飢えた挙句、誘拐犯である女性を尋ねます。

小説は少し過激な内容も含んでいますが、映画化によって思春期の男子を巧妙に描いている作品となっています。主人公の高校生を柄本佑、誘拐犯だった女性に松雪泰子を起用し、繊細に作られています。

藤田宜永の小説には、TVドラマ化された秀作があります。ドラマ化された作品は、中年男性の悲哀が描かれたものが多く、TVドラマならではの娯楽性の高い作品が選ばれているようです。

中高年男性の悲喜と哀愁、そこからの逆転人生。リストラでへこんでばかりもいられない、と戦う男たちが描かれています。『戦力外通告』は新聞に連載されていたものに、大幅に加筆し単行本として出版されています。

TVドラマとしては、wowowにて2009年2月21日に放送されています。主演の中年男性を中村雅俊が演じ、DVDもあるようですので気になった方はご覧になってみてください。

地味な中年サラリーマンが妻と娘のため、初売りの福袋を手に入れようと、大晦日からデパート前に並ぶ、と何とも悲哀に満ちた物語です。福袋を手に入れるまでの行列で起こるさまざまな人間模様に、複雑ではありながらも痛快さも感じられる作品です。

「行列48時間」との題名で、NHK金曜ドラマ2009年9月16日に國村隼主演で放送されました。

定年退職した男が、妻の浮気を調査してほしいと依頼してきたり、義母の行動を探る依頼をされるなどを、中年探偵が調査するが、そこにはいろいろな事情や、さまざまな人間関係があったのです。

題名を「僕らプレイボーイズ熟年探偵社」とし、2015年7月17日にテレビ東京系列にて放送されました。主演に高橋克実をはじめ笹野高史・角野卓造他が演じています。

藤田宜永作品にはほかにも秀作が多く、紹介しきれないほどです。中でも自伝的小説の「愛さずにいられない」は母親への憎悪が根底にある自分自身を描いていて、注目を集めた作品となっています。

また、短編の名手と言われた元になる著書に「巴里からの遺言」があります。この作品は「第14回日本冒険小説協会最優秀短編賞」を受賞しています。さらに、帰らぬ人となってしまった1年前の1999年には「求愛」で、第6回島清恋愛文学賞に輝いています。

藤田宜永と妻の小池真理子共著の『夫婦公論』は、小説家である二人らしくお互いにリレー形式でエッセイを綴られています。直木賞作家同士のコンビ漫才のように、突っ込みあう感じが楽しく読める作品となっています。

ほかにも、パリでの青春時代や軽井沢での作家生活などを、自身の中にある少年の心で語っている『深夜の少年』エッセイ集もおすすめです。

藤田宜永の作品は、純文学から恋愛小説・冒険小説・ミステリーとそれぞれに秀作が多くあります。直木賞作家の実力を存分にあじわい、探偵シリーズなどの本格的ハードボイルドのトリックに、挑戦する気持ちで読むのもおすすめです。こちらもあわせてご覧ください。