【2023最新】吉川英治文学賞の本おすすめ10選｜歴代の有名作品を紹介！今年の受賞作は？

作家の吉川英治氏は昭和を代表する小説家で、青年隠密と阿波藩士との戦いを描いた長編「鳴門秘帖」で人気作家となりました。また新聞に連載された「宮本武蔵」は多くの読者を魅了し、続いて「新・平家物語」や「私本太平記」などの大作を執筆し、たくさんの読者に親しまれ「国民文学作家」と呼ばれました。

吉川英治氏の没後、氏の功績を讃えて「吉川英治国民文化振興会」が主催し、講談社が後援して「吉川英治文学賞」が創設され、作家活動における1つの登竜門のような賞になりました。

当記事では、「吉川英治文学賞」の内容やこれまでに選ばれた主な作品・好みの作品の選び方・映像化された作品の解説、また若い読者におすすめの作品に併せて最新の「吉川英治文学賞の本おすすめ10選」をご紹介していきます。

「吉川英治文学賞」は、昭和の大衆小説の代表的な人気作家・吉川英治を記念して1967年に創設された文学賞です。大衆小説が対象となっており、年1回選出され発表されています。2022年で56回目を迎え、第1回は「昭和史発掘」など幅広い作家活動に対して「松本清張」が受賞しました。

受賞は選考委員の合議によって決定され、当初は作家活動に対する功労賞的な面が強かったのですが、近年は作品自体が対象となっています。受賞者には賞牌と副賞として賞金が授与されます。

これまでにいろいろな作家の作品が選ばれて受賞していますが、多くの作品が当時の世相を反映して現在でも残る人気作品となっています。徳川家康にまつわる七十余年の物語が描かれている全26巻の大作・山岡壮八「徳川家康」や池波正太郎の「鬼平犯科帳」など映像化された作品も多いです。

また五木寛之「青春の門」やユニークなテーマで話題となった小松左京「日本沈没」なども評判となり、宮尾登美子や佐藤愛子・永井路子・平岩弓枝・田辺聖子などの女流作家による繊細なタッチの作品も多いです。今年の受賞は江戸時代末期の遠野を舞台にした妖怪時代小説・京極夏彦「遠巷説百物語」とシングルマザーの恋愛や日本の入管体制を絡めて描いた中島京子「やさしい猫」の2作でした。

これまで吉川英治文学賞を受賞した多くの作品の中から選んで読む場合に、どの本が面白く読み応えがありおすすめの本なのか迷うケースもあると思います。そこでこれまでの受賞作品をジャンル分けしてその中の人気作品や映像化されたおすすめ作品をご紹介していきます。

第1回から第56回までの吉川英治文学賞・受賞作品の中にはいろいろなジャンルの作品が含まれています。ここではそれぞれの作品を振り返り、歴史物やミステリー・時代劇・現代小説・女流作家の作品などに大きくジャンル分けをして、人気作品をチェックしていきます。

吉川英治文学賞の受賞作品では歴史物のジャンルの作品が多く見受けられます。歴史小説に新風を送ったとされる柴田錬三郎「三国志・英雄ここにあり」や大河ドラマの原作となった新田次郎「武田信玄」・幕末初期の長州藩士吉田松陰や高杉晋作などの活躍を描いた司馬遼太郎「世に棲む日日」などがあります。

また東京裁判で唯一文官として死刑となった元首相・広田弘毅の生涯を描いた城山三郎「落日燃ゆ」や海外列強により浸食された清朝末期を描いた長編小説・浅田次郎「中原の虹」・天下取りを成し遂げた秀吉の風雲の生涯を描いた津本陽「夢のまた夢」などの傑作が揃っています。

受賞作品の中で時代劇のジャンルとしては、池波正太郎「鬼平犯科帳」や「仕掛人・藤枝梅安」などがあり、このシリーズは映像化もされ長い間人気となりました。石田三成の謀略を描いた藤沢周平「密謀」なども要チェックです。

また伝馬町牢屋の獄医を務める若い医師の物語で、NHKでテレビドラマ化された藤沢周平「春秋の檻」や壬申の乱をテーマにした黒岩重吾「天の川の太陽」・アヘン戦争後の物情騒然たる中国を描いた陳舜臣「太平天国」など傑作ぞろいです。

ミステリーのジャンルとしては、発見された焼死体の遺品に日本橋を囲む12の橋の名が書かれ、捜査陣が難解な事件に直面する東野圭吾「祈りの幕が下りる時」や解雇されたトラブルメーカーの女性アルバイトと同時期に起きた無差別連続毒殺事件との関連など、人の心の陥穽を鋭く描いた宮部みゆき「名もなき毒」などがあります。

また殺されたはずの男が生きていた事態に翻弄される男女を描いた赤川次郎「東京零年」や昭和39年オリンピック開催の東京で起きた警察爆破事件をテーマにした奥田英朗「オリンピックの身代金」など読みたくなるミステリーが目白押しです。

現代小説のジャンルでは、日本列島の下で何かが起きており、日本沈没の警告により政府が対応計画を立てるなど、多くの問題を喚起した空前のパニック小説・小松左京「日本沈没」や「軍艦島」と呼ばれる炭鉱の島で、死体で見つかった少女の事件を追う若き警察官を描いた大沢在昌「海と月の迷路」。

観測史上初も豪雪に見舞われたある町では自衛隊の派遣も要請されますが、そんな雪に閉じ込められた中で紡がれる心の温もりを感じられる短編作品集・藤田宜永「大雪物語」や偉人伝の陰で長く封印されていた野口英世の生身の姿を、見事に甦らせた傑作伝記長編・渡辺淳一「遠き落日」など傑作が揃っています。

吉川英治文学賞・受賞作品の中には、女流作家による作品も少なくありません。明治時代、名画「序の舞」などを描いた女流画家上村松園をモデルとした宮尾登美子「序の舞」や江戸の狂歌師・蜀山人を描いた平岩弓枝「橋の上の霜」。

またけわしい求法の道をたどり、北叡山を開創した伝教大師・最澄の生涯を、雲走り風騒ぐ激動の時代の中に描いた永井路子「雲と風と」や幕末から明治、昭和へと激動の時代に未開のエゾ地でひたむきに生きた若者の物語・原田康子「海霧」など女性ならではの繊細なタッチの作品が多いです。

吉川英治文学賞・受賞作品は映画やテレビドラマ化された作品もたくさんあります。その中には江戸時代を舞台とした長寿番組・池波正太郎「鬼平犯科帳シリーズ」があり、実在した主人公の火付盗賊改方・長谷川平蔵役を八代目松本幸四郎と二代目中村吉右衛門の親子2代で演じ人気となりました。

その他にも同じく池波正太郎の「殺しの四人 仕掛人・藤枝梅安」がテレビドラマ化され、梅安役には渡辺謙や岸谷五朗、映画版では萬屋錦之介が演じました。さらに山岡荘八「徳川家康」や新田次郎「武田信玄」・ 柴田錬三郎「三国志」・小松左京「日本沈没」・ 五木寛之「青春の門」なども映像化され評判となりました。

吉川英治文学賞の中には、若い人向けの作品も多いですが、中でもおすすめは五木寛之「青春の門」が挙げられます。五木氏は同賞受賞の他に「蒼ざめた馬を見よ」で直木賞も受賞し、若者を中心に幅広い層にブームを巻き起こした人気作家です。

「青春の門」は、太平洋戦争中に九州・筑豊に生を受けた少年が、彼を取り巻く人々とのふれあいやさまざまな出来事を経験し、波乱に満ちた人生の中で成長していく姿を描いています。1969年から書き始められ1994年まで断続的に続き、「筑豊篇」や「自立篇」・「放浪篇」から「風雲篇」まで全八編からなっています。シリーズ累計で2200万部に迫る大ベストセラーとなり、映画化やテレビドラマ化・漫画化もされ大人気となりました。

「吉川英治文学賞」の選出は5人の選考委員の合議によって決定されます。第1回から第4回までは石坂洋次郎や井上靖・川口松太郎・永井龍男・丹羽文雄の各氏が務められ、以降56回まで同賞を受賞した作家が、その時代毎に選考委員になるケースが多いようです。

これまで池波正太郎や水上勉・城山三郎・杉本苑子・ 五木寛之・井上ひさし・浅田次郎・北方謙三・宮部みゆき・平岩弓枝など第一線で活躍されている人気作家の方々が委員として名を連ねています。

これまで「吉川英治文学賞」に選ばれた作品は読者を魅了する本が多く、また映像化された作品など傑作もたくさんありますね。もし本選びに迷った際には、当賞の中からお気に入りの作品を見つけて、傑作小説の世界に浸ってください。