芥川賞小説おすすめ作品ランキング10選｜歴代の最高傑作や直木賞も

書店に行くと、「芥川賞受賞」や「直木賞ノミネート作品」など、文学賞について帯に書かれた本がたくさん並んでいますよね。書店でも目立つ場所に特集が組まれていたりします。最近は小説が映画化される機会が多いので、以前観た映画の原作が芥川賞受賞作品だった、なんて方もいませんか。

しかし、芥川賞と聞くと、「内容が難しくて読んでもよく分からない作品が多い」といったイメージを持っている方が多いです。社会問題をテーマにした作品は確かにありますが、青春群像劇やラブストーリーなど、手に取りやすいテーマの作品もたくさんあります。若手作家の作品もあるので、自分と近い年代の作家の作品を選ぶのもいいかもしれません。

本記事では芥川賞の歴代おすすめ作品をご紹介します。持ち歩きやすい文庫本になっている作品もたくさんあるので、書店に行った際の参考にしてみてください。自分にとっての最高傑作を見つけ、読書ライフを楽しみましょう。

芥川賞のおすすめ作品を紹介する前に、読書初心者の方のためにも「そもそも芥川賞とは何？直木賞とはどう違うの？」といった疑問を解消しておきましょう。

芥川賞とは、無名、新人作家によって発表された対象作品の中で審査員による評価が高かった作品に贈られる賞で、テーマは純文学です。純文学とは芸術性に重きを置いた作品群を指し、長さは短編と中編作品が主になります。

現存の出版社である文藝春秋の創業者である菊池寛が、親交があった名作家、芥川龍之介の名を借り、直木賞と共に昭和10年に企画されました。受賞者には正賞として懐中時計と、副賞に100万円が授与されます。年に2回選考が行われており、受賞作品は文藝春秋に掲載されます。

公募ではないため、いずれの作品も審査員があらゆる候補から選び抜いた傑作であり、非常に魅力的なものばかりです。

直木賞の正式名称は、「直木三十五賞」。基本的には無名から中堅作家による大衆文学作品に与えられるものです。かつては、芥川賞と同じように、無名・新人の作家による作品がノミネートされていましたが、現在では中堅作家の作品が中心となっています。

芥川賞が純文学作品を取り扱い、文章の高い芸術性を評価するのに対し、直木賞は大衆文学の高い娯楽性を評価します。普段小説を読まない読書初心者の方や、読書歴が比較的浅い中学・高校生は、純文学よりも大衆文学の方が読みやすくて面白いと感じるかもしれませんね。

文章の美しさよりも、どちらかといえばわかりやすい文章でストーリーの面白さを享受したい方は、是非直木賞受賞作品のおすすめ記事も参考にしてください。

芥川賞を受賞した作品の中には、文庫だけでなく映像化や舞台化など、他コンテンツにおける作品の題材になる場合があります。そういった作品は純文学小説をあまり読まない方でも馴染みがあり、作品を選ぶ基準が全くない方におすすめです。

芥川賞を含めた小説の中でも特に人気のある作品は、小説を原作とした映像作品にしばしばなります。

映像化された作品は文章に比べて見やすく、上映時間も2時間程度なので飽きずに最後まで楽しめます。また、文章だけでは分かりにくかったシーンや、登場人物の感情がいまいちくみ取れなかったシーンなども映像で再現されているので、より分かりやすくなっていますよ。

キャスティングや時間の都合によるカットで、原作に合った本来の魅力が損なわれる可能性があるので、映像作品を見て大まかなストーリーを把握したうえで文庫を手に取る、といった楽しみ方をおすすめします。

映像化以外にも、舞台化される場合もあります。

舞台の特徴は、俳優の生の演技を間近で見られるため、より登場人物に感情移入しやすくなり、本来の純文学の魅力をより肌で感じられる点です。普段小説しか読まない方は、一度劇場へ足を運び、新しい視点から作品を味わっていただきたいです。

文章や映像と違って場面転換や環境をある程度自分で補填する必要があり、慣れていない人にとっては非常に疲れてしまうかもしれません。まずは作品の原作を最後まで読み、その後舞台を見ると、作品をより楽しめます。

芥川賞の対象作品は短編、中編のものであるためページ数に大きな差があるので、普段から小説を読むか否かで読みやすさが変わります。後述のランキングでは、作品と併せてページ数を紹介していますので購入の参考にしてみてください

短編の芥川賞作品の中でも特にページ数の短いものは、原稿用紙わずか28ページと非常に短く、文字を目で追うだけなら1時間もかからずに完読できます。

短編作品を文庫で購入する場合、2~5作品ほどの短編小説がまとめられているものが多く、芥川賞作品以外の同作家の作品も読め、一度に多くの作品に触れられます。また、文字数が少なくても純文学としての魅力を紐解く事も含めると、さらに多くの時間を楽しめます。

普段小説をあまり読まない方は、短編小説を手探りでもいいのでゆっくりと味わうのをおすすめします。

短編の芥川賞作品の中でも特にページ数の多いものは、原稿用紙234ページと膨大で、特に短いもと比べると約10倍です。

ストーリーのボリュームが大きいため、要所要所に純文学としての魅力がたくさん詰まっており、一つの作品世界にどっぷりと浸かれます。また長期的に読み続けられるので、読むスピードが速い方も満足できるはずです。

反面、ストーリー中の展開が目まぐるしく変わったり、登場人物の把握が困難であったりする作品も一定数あり、読み終えるまでに頓挫してしまう可能性があります。普段は他ジャンルの小説を読むが純文学に挑戦したい方にはいい足掛かりになると思います。

芥川賞をはじめとする純文学作品は小難しいイメージがあり、若い方はなかなか読む気にならないかと思います。

しかし、作品の中には学生生活をテーマにした青春群像劇や、若者特有の悩みや葛藤を描いた作品も多く存在します。また、ストーリーが比較的単純であったり、使用されている漢字がやさしめであったりと作品ごとの特徴があり、それらの情報も後述のランキングに記載されているので、ぜひ純文学デビューの参考にしてみてください。

若者をテーマにした作品を読み、今しか味わえない若者特有の感情を登場人物に重ねてみてはいかがでしょうか。

日々の仕事に追われる20代から60代の社会人の皆さんには、感情を大きく揺さぶらせられるような、刺激的な作品をおすすめします。

社会人の多くは職場と家の往復になりがちですが、通勤時間や寝る前の一時間など、些細な時間でも楽しめるのは、小説の大きな魅力の一つです。

芥川賞作品の中には非日常的な作品がたくさんあるので、単調な日常に彩を与えてみてはいかがでしょうか。

仕事もひと段落し、ゆっくりと時間を過ごす60代以上の皆さんには、登場人物の生から死までを客観的に追体験できるような作品をおすすめします。

登場人物の成長や挫折、苦悩など自分の人生に重なる部分があるかもしれません。自分の人生の思い返すお供に、芥川作品をおすすめします。

文庫本を手に取った経験がある方ならご存知かと思いますが、文庫本の背表紙には150字程度で作品の概要が書いてあります。実はこの概要が作品選びの重要なポイントになっています。

この文庫本の裏に書かれた概要は、作者または編集者による作品の導入や大まかな物語の説明が書いてあります。作品選びに困ったときはこの概要をチェックすると、自分好みの作品か、興味が引かれる内容かといった判断が可能です。

Amazonをはじめとしたネットショップにおいてもこの概要は役立ちます。作品のページにおける商品説明や概要といった情報にそのまま載せてあるケースがほとんどなので、ぜひ参考にしてください。

学生時代に読書感想文を書いた経験がある方がほとんどだと思いますが、その際に作品の後半部分に書かれたあとがきを参考にした経験がある方は意外と多いです。このあとがきは、作者による解説や、作品に対しての意気込み等が書かれています。

純文学におけるあとがきには、主に作者の心情が書かれている場合が多いです。あとがきから作者が伝えたいこと、意識していたこと、作品を書こうと思った心情をうかがうことができ、魅力的な作品選びの重要な要素の一つになります。

店頭での文庫選びにおいて参考にする際は、ぜひこのあとがきから魅力的な作品を選ぶのをおすすめしますが、あとがきは文庫のページの一部でありすなわち作品の一部でもあることや、立ち読みに該当する場合もあるので注意しましょう。

2022年上半期の芥川賞受賞作品は、高瀬隼子「おいしいごはんが食べられますように」です。

職場で早退・欠席が多いが、可愛さから思わず守ってあげたくなる女性職員の芦川。芦川の仕事での穴埋めをしなければならない女性職員・押尾。押尾は2人の同僚で芦川の恋人である二谷に、一緒に芦川に意地悪をしないかと持ち掛ける。職場という狭いコミュニティの中での人間関係を描いた作品です。

学校や会社など、閉塞感のある空間の中で、人間関係で悩んでいる人はたくさんいます。今作のように実際読者が接している環境を題材にした作品は、読むと共感する部分が多いかもしれません。

いかがだったでしょうか。「芥川賞」の対象は純文学作品に限りますが、その中でもオリジナリティあふれる魅力的な作品がたくさんありました。作品ごとに共感を得やすい年齢層や、読みやすいページ数といった要素があるので、ぜひ今後の小説選びに今回のランキングを参考にしてみてください。