倉橋由美子のおすすめ小説10選｜寓話的な作風が人気！代表作もあわせて紹介

倉橋由美子は大学在学中に『パルタイ』を発表し注目されました。日本の女流作家としては、少ない抽象的で寓話的な作風の小説家です。カフカやカミュなど不条理の世界を描いた作家に影響を受けたと語っています。

父親は歯科医で、倉橋由美子自身は精神科医を目指しましたが受験に失敗してしまいます。京都女子大学文学部に籍を置きながら再受験するも再度失敗してしまい、歯科衛生士の短期大学に入学します。その後、フランス文学を学ぶため大学に再入学します。

ここでは、倉橋由美子の小説の特徴・代表作・翻訳した童話・おすすめ10選などをご紹介します。倉橋由美子の小説に興味がある方は、ぜひ最後までお読みください。

倉橋由美子の略歴について、ご紹介します。

【プロフィール】

• 本名：熊谷由美子（旧姓：倉橋）
• 生年月日：1935年10月10日
• 出身地：高知県香美郡
• 最終学歴：明治大学大学院文学研究科中退

【経歴】

• 精神科医を目指し公立の医学部を受験するが失敗
• 京都女子大学文学部に籍を置きながら医学部を再受験するが失敗
• 日本女子歯科衛生短期大学に入学し、歯科衛生士の資格を取る
• 歯科衛生士として働きながら明治大学仏文科に入学
• 明治大学在学中学長賞を狙い『パルタイ』を応募
• 1961年女流文学賞受賞
• 1963年田村俊子賞受賞
• 1962年父親の死により体調を崩す
• 1964年熊谷富裕と結婚
• 1966年アイオワ州立大学に留学
• 1987年『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞受賞
• 2005年6月10日に拡張型心筋症により69歳で死去

倉橋由美子は女性には少ない抽象的で寓話的な作風の小説家です。「第三の新人」のあとの新世代作家として、石原慎太郎・大江健三郎・開高健らとともに称賛されました。とくに、大学時代にデビューしている大江健三郎と比較されることが多かったようです。

倉橋由美子が影響を受けた作家は、ビュトール・カフカ・サルトル・川端康成などです。初の長編小説『暗い旅』はビュトールの模倣ではないかと江藤淳に指摘され、「海外文学模倣論争」にまで発展しました。また、旧仮名遣いでの執筆であることが倉橋由美子の作風の特徴です。

倉橋由美子の代表作1つ目は、デビュー作の『パルタイ』です。倉橋由美子の短編で、明治大学学長賞に入選した作品です。本作は芥川賞候補となり女流文学賞を受賞しました。『パルタイ』とはドイツ語で「党」を意味します。

主人公の「わたし」は、恋人から「党」への入党を強くすすめられ、提出が必要とされている「履歴書」を執筆します。もともと「党」に関心がなかった「わたし」は、「履歴書」が受理されるとともに脱退を決意します。物語は1960年代に全国で行われた学生運動を風刺しています。

倉橋由美子の代表作2つ目『暗い旅』は、倉橋由美子の初の長編小説です。主人公が「あなた」という2人称で語られていく物語が斬新です。物語では、恋人で婚約者でもある「かれ」が突然失踪してしまいます。

「あなた」は「かれ」を追って、東京から鎌倉、京都へと旅を続けます。悲しい過去の記憶を手繰りながら旅は続けられ、壮大な恋愛叙事詩として文学界に衝撃を与えた作品です。2人称で語られ、まるで読者自身が「暗い旅」に出ているかのような気持ちになる作品です。

倉橋由美子の代表作3つ目は『聖少女』です。本作は倉橋由美子が父の死を乗り越え、アメリカ留学前に執筆した小説です。主人公は交通事故で記憶を失った少女・未紀です。事故前に未紀が綴っていたノートがあり、そこには「パパ」を異性として恋していた妖しく狂おしい内容が記されていました。

ノートを託されたのは未紀の婚約者のKでした。Kはそれが真実なのかを確かめようとします。禁断の関係を描いた倉橋由美子の美しくも危険な小説です。

倉橋由美子の代表作4つ目は『夢の浮橋』です。本作で、倉橋由美子は新境地を開いたと言われています。主人公は大学で英文学を学ぶ女子大生・桂子です。桂子は恋人の耕一と旅行中に、偶然自分たちの両親が相手を入れ替えたペアでいるのを見てしまいます。

これを見た桂子は自分と耕一が兄妹の可能性があると気づきます。2人の両親の「夫婦交換遊戯」のために「桂子と耕一の恋愛」までもが、禁断の関係になってしまう可能性を生み出してしまいます。本作の主人公・桂子の作品はシリーズ化されています。

倉橋由美子は、小説だけでなく童話の翻訳も精力的に行っています。代表作はサン・テグジュペリの『星の王子さま』やシルヴァスタインの『ぼくを探しに』『屋根裏の明かり』『人間になりかけたライオン』などがあります。

仏文科卒でアメリカ留学も果たしているので、英語訳・フランス語訳ともできるのが倉橋由美子の強みです。翻訳以外にもエッセイも多く執筆しています。『迷路の旅人』『おんなの知的生活術』『最後の祝宴』などがおすすめです。

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倉橋由美子の小説は2人称で書かれていたり、寓話的なものがあったりと、とても個性的です。女流作家ならではの視点から描かれた小説は、男性にもおすすめです。倉橋由美子の小説の世界観を楽しみましょう。

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