黒井千次の小説おすすめ10選|どんな小説家?『時間』など代表作を紹介!

黒井千次の小説について、その作風や魅力について語っていきます。代表作『時間』や『カーテンコール』をはじめ、さまざまな作品を生み出してきた黒井千次。小説の他にエッセイも手がけています。おすすめ作品をピックアップしてご紹介しますので、ぜひ ご覧ください。

2023/08/10 更新

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経済小説というジャンルがある。 最近なら、直木賞を受賞した池井戸潤が該当するだろうか。企業小説といったほうが適切かもしれないが、経済活動を主軸に置いたものであるから、経済小説のサブジャンルと見てもいいと思う。 より、「経済」に主軸を置いた、株や為替について扱っているものだと、幸田真音などがいる。 黒井千次が、この作品集に収められてる作品を書いていた60年代後半〜70年代前半、ということだと、山崎 豊子が銀行を舞台にした「華麗なる一族」を書いている。城山三郎も現役だった。 それらの「経済小説」とも、また、大正期にあったようなプロレタリア文学とも、この作品は違う。あくまでも個人に焦点を当てているという点、また、純文学としては珍しい会社員について書いているという点、そこが黒井作品のユニークな点だろう。個人の生活があり、しかしそこには労働(=生)の手触りが希薄であったり、なおかつ、単調な生活のリズムに救われる部分もある。 会社員生活、あるいは会社というのは、何十年経ってもそれほど変わらないのだ。 表題作の「時間」がやはり秀逸だろう。課長資格試験に受験することになった男の、得も言えぬ曖昧模糊とした感覚が、会社勤めしている人なら分かるのではないかと思う。

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日本の家族に普通に見られるあの息のつまったような感じ、を端麗な文体で表現しています。本は、同じ袋小路に棲む、人生の様々なステージ(結婚数年後、小さい子供がいる、大学生がいる、子育て後)にある4つの家族を中心に、オムニバス形式で、進行していきます。 共同体における共通の軸・価値観、といったものが失われて久しい現在、それでも家族という単位で生活していかなければならない現代人の混迷を、淡々と、美しい暗喩をまじえながら描き出します。80年代に書かれた本ですが、21世紀になった今でも、その問題意識は新鮮さを失っていません。安易な解決策、カタルシスを提示せず、ざらっとした不快感を残す終わり方に、著者の苦悩の深さが読み取れます。

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黒井千次と聞いて、いまの若い読者はすぐに作品が思い描けるだろうか? しかし、数年前まで中学・高校の教科書に『春の道標』が載っていたそうだから、意外と名前だけは知られているのかもしれない。 黒井氏はいまや文壇の大御所。芥川賞の選考委員も務められている。個人的に代表作は谷崎賞受賞の『群棲』(講談社文芸文庫刊)だと思うが、折にふれてとりあげる若い人の恋愛を描いた佳作。 舞台女優を目指す主人公と周囲の人々との感情の交錯をこまやかに描いて衝撃的なラストシーンへと導く手腕はまさしく巨匠の芸。 かつて「内向の世代」と呼ばれた1人だが、寡作なのが残念。重厚で濃密な長篇が読んでみたいと思うのは私だけだろうか?

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(前略)生殺しのものを探すために、それを象徴するアシザワを捜す、推理小説としても読めると思う。

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黒井千次の老いをテーマにした短編集。 表題の夢の柵、陰の家、眼など2005年師走の書かれた12編。 だれもが迎える老い、そしてその日常起ること、そう言うものかと思うと同時に 何か黒い重いものを突き付けられているような感じがする。 その中で面白かったのは、記録と一日と影の家。 黒井千次は短編もうまい と感じいった次第。 このような小説が心にずんと沁みて来るのも齢のせいかなあと思ってしまう。

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老年が見えてきた男の情緒が描かれた短編集。 三多摩の土地をテーマにした連作。 男の情けなさが伝わってきた。 感受性の強い男は老けると、 このように滑稽な自意識をもつものかと、 多少の驚きをもって読んだ。 その点、老いを迎えようとする男の自意識を深くえぐった力作だと思う。 自分の人生にも、女への未練も半端に総括し、 それすらも言い訳する男の情けなさを描き切っていると思う。

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嬉しい一書  この世代でまだ書く意欲を失っていない稀少な書き手。長年書き溜められたもので、直近の新作というわけでは必ずしもないが、往年の黒井の姿がまだたしかにある。

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講談社

石の話 黒井千次自選短篇集 (講談社文芸文庫)

※収録されている短編の一つ「おたかの道」は、先にご紹介の『たまらん坂』にも掲載されています。

自薦短篇が9編。すごいなあと思いながら読んだ。 「袋の男」はゴミ集積場で女の人が出すゴミ袋を拾う話だけれど、すごい恐怖。この恐怖は「庭の男」にも通底するもので、ほんとうに怖かった。「石の話」は石を象徴的に使って構成されていて、夫婦の心のすれ違いにはどきっとさせられる。1970年から1996年の間なのだが、決して過去のものではない。むしろ、初めて作品を読んで新鮮に感じられた。

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