泡坂妻夫の小説おすすめ8選｜『しあわせの書』のヨギガンジーシリーズや口コミも紹介

最近は推理小説ブームが後押しして多くの作品を手に取れるようになりました。しかしたくさんの作品を読みあさるうちにトリックがわかるようになってしまったり、似たようなトリックで飽きてしまったりしていませんか？

今回紹介する泡坂妻夫は、昭和から平成にかけて人気を博した推理作家です。若いかたにとっては古典に分類できそうな作品ですが、泡坂は間違いなく現代においても新鮮な驚きで楽しませてくれる作家です。

一方で泡坂は奇術家という面白い経歴の持ち主としても知られます。今回はそんな泡坂が書いた小説を紹介します。おすすめの作品を選びましたので、いままでとは違う推理小説をお探しならこの記事でチェックしてみてください。

泡坂妻夫(あわさかつまお)は1970年代～2000年代に活躍した推理作家です。本名は厚川昌男(あつかわまさお)で、ペンネームは本名のアナグラムになっています。先述しましたが奇術家としても有名で、奇術のごとく読み手がおどろくトリックの表現方法が愛されています。

当時としては斬新なタネ明かしのしかたや、紙面上の袋とじを利用して話の内容を変える技法など、遊び心あふれる作風は多方面から評価され、数々の文学賞を受賞しています。

主人公の亜愛一郎(あ　あいいちろう)はカメラマンです。なぜか頻繁にでくわす殺人事件に対し、観察力だけで見事に犯人を突き止めてしまう物語です。全部で24編の短編を3冊にわけて出版しています。

このシリーズは「トリックのデパート」と評されるほど質の高いトリック描写に富んでいます。伏線が何気ない描写のなかに数多くあり、タネ明かしで悶絶してしまうこと間違いなしな短編集です。どの話から手にとっても楽しめます。

ミクロネシア人とドイツ人、「大阪人」の混血である主人公・ヨギガンジーは奇術とヨガの達人です。ユーモアあふれる主人公や超常現象へ挑む様子は少し前にドラマで人気を博した『TRICK』と似た部分があります。事件や犯罪を解決するための「タネ」の明かし方に定評がある作品です。

ここでのおすすめは、読んでいる本そのものに仕掛けが隠されている奇書『しあわせの書』、短編を読んでから単行本の袋とじを開かせる『生者と死者』の2編です。

乱れからくりは日本推理作家協会賞を受賞したほか、直木賞の候補にも挙がった作品です。俳優・松田優作が主演の映画は当時話題になりました。「人が隕石に当たって死ぬ」という強烈な導入の本書は、奇術師でもある泡坂の知識がふんだんに盛り込まれています。

次から次へ「からくり」が登場し、ふむふむと読んでいるうちにトリックは仕掛けられていきます。最後の仕掛けがあらわになった瞬間、読者を仰天させてくれる素晴らしい作品です。

蔭桔梗(かげききょう)は直木賞を受賞した短編集ですが、ほかの泡坂作品とは違いどんでん返しやハラハラ感はあまりありません。そもそも蔭桔梗とは桔梗の花をモチーフにした家紋のことですが、これは泡坂が和服に家紋を描く絵師「紋章上絵師」の家で育ったことに由来します。

下町の職人世界を舞台に男女の機微や職人の悲哀が描かれた11編です。ストーリーは全体に切なさをまとっていて、ミステリーでありながらしっとりと読み切ることができます。

泡坂妻夫の初めてとなる長編作品です。マジックショーの会場を舞台に殺人事件がおこり、事件の真相をあばいていく話が本筋となります。劇中で登場する手品の数々は、まさに泡坂が得意とする奇術のオンパレードで、それぞれがトリックと絡み合うさまは見事です。

途中で作中作の短編が差し込まれるのですが、これが大きな役割を果たしています。これ以上はネタバレになってしまうため割愛しますが、泡坂ワールド全開の素晴らしい作品です。

ミステリファンがうなり、直木賞候補にまでなったのが短編集『煙の殺意』です。表題作含む8編からなる作品で、1980年の発刊ながら今読んでも新鮮さにあふれています。『椛山訪雪図』や『紳士の園』、『歯と胴』そして『煙の殺意』あたりがファンの間で特大評価されておりおすすめです。

『氷菓』シリーズでおなじみの米澤穂信もおすすめする珠玉の短編は、令和になったいまでも新しい読者をとことん楽しませてくれます。

泡坂妻夫は自身のバックボーンである紋章上絵師・奇術家の知識をふんだんにちりばめた著作を多く発表しています。『卍の魔力、巴の呪力―家紋おもしろ語り』は泡坂が家業で関わる家紋について独自の知見で語り、好奇心をくすぐる一冊。

『泡坂妻夫　マジックの世界』は奇術家である泡坂が考案したオリジナルマジックを掲載したマジック集となっています。どちらも小説ではないものの、泡坂ワールドを裏付ける膨大な知識を垣間見られる作品です。

泡坂妻夫は推理小説ファンなら一度は触れておきたい作家です。もし1冊も読んだことのないかたがいたら、ぜひ騙されたと思って読んでみてください。見事に練り上げられた作品に気持ちよく「騙された！」と叫んでみませんか。

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