城山三郎の作品おすすめ10選｜人気作や代表作を徹底解説

城山三郎の小説には、どの作品を読んでも描かれる人間は高い志をもつ人物です。組織や大義と自分がもつ志の間で、もがき苦しみ生き抜いていく人々が登場します。読みやすい作品で、書かれている人物から影響を受けた人は少なくありません。

城山三郎は大学卒業後、愛知学芸大学に勤め教員となって景気論などを教えていました。作家デビュー前の1955年、地元名古屋を中心とした中京経済圏で活躍した経営者たちの逸話をまとめ、中部経済新聞に連載しています。経済小説の原点とも言えます。

城山三郎作品は、経済小説、伝記小説、戦争小説と実に多彩な人物とストーリーが読者を惹きつけます。おすすめ傑作作品は実に多くありますが、どれを読んでもハマります。

城山三郎は1945年(昭和20年)5月、17歳の時に志願して海軍特別幹部練習生になります。敗色濃い戦争末期の軍隊がどんなものか思い知らされます。国家に裏切られた悔しい想いを抱えながら新しい時代を迎えています。

典型的な組織悪を軍隊で見た経験を書き留めようと、作家を志します。城山三郎作品には、組織の中で苦悩する個人が多く登場します。

城山三郎は1952年(昭和27年)、一橋大学を卒業し名古屋へ帰郷しています。帰郷後は愛知学芸大学(現・愛知教育大学)に教員として勤め、景気論、経済原論を担当しています。

中京財界史をまとめ中京経済新聞への連載を機に、大学で教えながら執筆活動も始めています。経済界の裏で動めく人間模様に関心を持つようになり、本格的に作家としての創作を開始しました。

菊池寛賞を受賞した『もう、きみには頼まない』は、経団連会長となり日本経済のリーダー役を勤め、1970年大阪万博を成功に導いた実業家・石坂泰三が主人公です。

第一生命を日本有数の企業に育て上げ、労働争議の中で危機にあった東芝を立て直し、頼まれたら困難な仕事でも引き受け、時の権力者におもねるそぶりすらもなかった人物の経営哲学が描かれています。

直木賞受賞作『総会屋錦城』は、城山三郎の経済小説として読まれていますが、財界の裏を描いた社会小説とも言えます。

主人公は、株主総会の裏で命を懸けて暗躍する年老いた大物総会屋ボスです。銀行乗っ取りを画策する総会屋グループを排除するストーリーですが、企業を題材にした城山小説はその時代の空気感をも表現してくれます。

吉川英治文学賞を受賞した『落日燃ゆ』は、極東国際軍事裁判で絞首刑となった広田弘毅の生涯を描いた長編作品です。

学校の教科書では教えてくれない歴史解説書のような作品です。広田弘毅の泰然とした生き方を描きながら、なぜ日本は戦争へとひた走ったのかを考えさせられる小説です。外交官から二・二六事件後の首相に就任した悲劇の宰相・広田弘毅の人物像を読み取れます。

『黄金の日々』は1978年のNHK大河ドラマで放映された人気作品です。安土桃山時代の商人の町・大阪堺と豪商・呂宋助左衛門が主人公の小説です。

自由な町で経済力を蓄え権力に屈しない人々は、時の天下人・秀吉とも対峙できるほどの黄金の日々を過ごします。時代は江戸幕府の世に向かい始め、少しずつその輝きを失っていく姿が描かれています。

人気作品『雄気堂々』は実業家・渋沢栄一の半生を描いた伝記小説です。NHKの時代劇ドラマ『雄気堂々若き日の渋沢栄一』となり、1982年放映されています。

不思議な縁で徳川慶喜の弟・昭武とパリ万博に出席します。帰国後は新政府の中で国づくりに奔走しますが、藩閥政治に嫌気がさしその後は経済界で活躍します。ダイナミックな時代の変化を読みとれます。

1957年に文学界新人賞を受賞した『輸出』は城山三郎のデビュー作品です。高度経済成長期を支えてきた企業戦士が主人公です。

家庭を犠牲にして、会社のために身を粉にして働いた当時の日本人を思い起こす作品です。1974年に発表した『毎日が日曜日』では、その後の企業戦士の姿を描いています。城山三郎の経済小説は、組織の中で生きる人間について学ぶ機会になります。

城山三郎が書く伝記小説は、トップリーダーのあり方を世に問う作品です。『落日燃ゆ』の広田弘毅、『雄気堂々』の渋沢栄一、『粗にして野だが碑ではない』の石田禮助などの政界、財界の人物を取り上げています。

組織のリーダーとして、極めて人間として魅力あふれる人物を描いています。トップリーダーのあり様を考える機会になります。

城山三郎が描く小説の世界は、気骨ある男たちの生きざまを描いた作品ばかりです。没後、次女が遺稿を再編集して出版したエッセイ『そうか、君はもういないのか』は、城山三郎がもっていた人間性を垣間見る感動の手記です。多彩な城山三郎小説の世界に浸るのもおすすめです。

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