伊藤整のおすすめ小説5選｜代表作から詩人時代まで詳しく解説

伊藤整は日清戦争や世界大戦の真っ只中を生きた小説家です。活動期間は1926年から1969年でしたが、活動終期になるほど伊藤整ブームが到来し作品数も増加、注目度が高まりました。

1963年には菊池寛賞、1967年には日本芸術院賞を受賞し、1970年には三大新潮賞のひとつである日本文学大賞も受賞しています。これらの受賞歴をきっかけに、没後20年を記念した「伊藤整文学賞」が創設されました。

この記事では文学業界に大きな功績をもたらした伊藤整の経歴や、話題に上がった人気作などをまとめてご紹介していきます。

伊東整の小説は、文学の表現手法のひとつである「意識の流れ」を上手く利用していることが特徴です。これは小説において「人物の感情に関する記述を、注釈を利用せずただ書き連ねること」として定義付けられています。

本来は心理学で確立された思考ですが、伊東整が日本で初めて新心理主義文学として文学に流用したことで定着しました。

伊東整は1905年に12人兄弟の長男として生まれました。日清戦争の関係で北海道を渡り歩くことになりますが、中学時代に友人の影響で詩に興味を持ち、同人誌の制作を始めます。

卒業後は英語教師として職に就きながら、同人誌『青空』や『信天翁』などを発行しました。この詩人としての経験が、のちの小説家活動のきっかけとなります。

大学に入学後は知り合いの紹介により、初めて短編小説に寄稿します。その後も豊富な人脈のおかげで、伊東整のはじめての小説である『飛躍の型』の発行が実現しました。

以降は評論と小説の発行数を急増させ、1930年代だけでも20作品以上を生み出しました。小説家・評論家として本格始動した転換期です。

伊藤整はフランス文学の学習歴や英語教師を務めた経験を生かし、翻訳本も多数発行しました。しかし翻訳本2作品となる『チャタレイ夫人の恋人』がわいせつ文書に該当すると裁判を起こされ、「チャタレイ裁判」として問題になりました。

いっぽうで裁判を経てからも修正された完訳本が発行され、執筆数も留まることなく増加していきます。騒動は起こったものの、伊藤整の注目度を上げるひとつの背景となりました。

伊藤整の作品を初めて読むなら、映画化された代表作『女性に関する十二章』がおすすめです。映像であれば読書が苦手な方でも親しみやすく、物語の流れも理解しやすくなります。

原作は1954年に発行された古い本ですが、2021年に復刊版の最新作が発売されています。手に取りやすい作品なので、初心者にも試しやすくなっています。評論について触れたい方は『小説の方法』がおすすめです。

伊藤整の人気作品と言えば『街と村・生物祭・イカルス失墜』のタイトルで知られる、通称“生物祭”です。この本は桜が舞う春の北国を舞台に、主人公と母・病気の父の3人が登場して物語が進んでいきます。

生と死について鮮やかに描かれている本書におて、特に注目すべきは伊藤整が得意とする感情の描写です。「意識の流れ」を取り入れた新骨董ともいえる小説は見逃がせません。

翻訳本から選ぶのであれば、話題に上がった『チャタレイ夫人の恋人』をおすすめします。裁判がきっかけで修正を求められた箇所がありますが、伊藤整の息子である伊藤礼が該当部分を補訳した完訳本が出版されています。

50年近くも前の作品が現在でも人気を集めているので、一見の価値があります。ページ数も多く読みごたえがある作品です。

実際に伊藤整の小説を読んだ方はどのような感想を抱いているのでしょうか？いくつか口コミが見られたのでご紹介します。

口コミを見てみると、裁判で問題になった小説家とは思えないほど評価の高いものばかりでした。ここ数十年の時代の流れで価値感も変化し、過去の名作を振り返る楽しさも味わえます。どの本も読む価値のある作品としておすすめできます。

今回は戦争を経験しながらも文学の分野で活躍した伊藤整についてご紹介しました。詩人としてデビューしましたが、小説・評論・翻訳で実績を残し、注目度が高まりました。最新版として発行されている書籍も多いので、ぜひ手に取ってみてください。

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