つげ義春のおすすめ漫画5選｜代表作の『ねじ式』から作品の魅力まで紹介

つげ義春は、カルトな人気を誇る漫画家です。つげ義春の表現主義的な作風はアングラ界隈でも高く評価され、芸術漫画家と謳われています。また、つげ義春のフランス語版『全集』についてフランスメディアが「日本漫画界最高の天才」と報じるなど、つげ義春作品は海外でも人気です。

しかし、つげ義春の漫画は『ねじ式』や『紅い花』をはじめ種類が多く、どれを選べばいいか迷ってしまいますよね。実は、それぞれの物語のあらすじ・登場人物・世界観などを知っておけば、自分好みの漫画を見つけられます。

そこで今回は、つげ義春の代表作や人気おすすめ漫画を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。各作品のあらすじをはじめとした物語の特徴や登場人物の魅力についても解説します。

赤面恐怖症だったつげ義春は、空想したり絵を描いて暮らせる職業として漫画家の道を選びました。トキワ荘に住んでいた手塚治虫を訪ねてプロ漫画家になる意思を固め、1955年に若木書房から『白面夜叉』で漫画家デビューします。

『ねじ式』発表前の1967年頃からカメラに興味を持ち始めたつげ義春は、ニコマートFTN（ニコン）を購入します。当初は漫画の取材用スケッチの代わりにカメラを活用していました。1970年頃からは本格的にカメラ収集をはじめたつげ義春は、集めすぎたカメラを売買する『ピント商会』を設立します。

つげ義春のカメラコレクションはマニア垂涎物の品揃えで、『ピント商会』に関するさまざまなエピソードが残されています。

代表作『ねじ式』により芸術漫画家と評価されたつげ義春は、発表の場が限られて好きな作品を描けなくなっていきます。このジレンマに苦悩しながら、当時進行中だったノイローゼ治療のためにもなると夢日記をつけはじめました。

夢日記を漫画にできないかと考えて発表された作品が『夢の散歩』です。さらに『夜が掴む』などの夢の漫画家を本格的にスタートさせて、夢の雰囲気を表現するためにわざとパースを狂わせた絵を描きはじめました。

狩りにやってきた主人公の青年は、沼のほとりに佇む無表情な少女と出会います。少女は青年を自宅へ招き入れて身の上話をしているうちに眠ってしまい、主人公は少女の首をそっと絞めました。翌朝、少女は青年を泊めた件を義兄に責められ、青年は沼の対岸に向けて猟銃の引き金を引きます。

沼は、つげ義春漫画の表現主義的な作風が生まれた作品です。それまで描いてきた漫画とは、絵柄・コマ割り・構成などが一変しています。この終わりのないラストシーンは、その後の作品にも受け継がれていくつげ義春の意図的な構成です。

初茸がりに行く前日の夜、主人公の正太がシトシトと降り続く雨を見ていると、初茸の生える赤松のあたりに大粒の雨粒が降っているのが見えました。祖父に伝えても見間違いだと促され、床に就いたものの眠れない正太は、柱時計の中に入り込んで眠るのでした。

初茸がりは、メルヘンでノスタルジックな雰囲気でありながら「つげ的世界が開示された傑作」と評されています。難解でダークな雰囲気を放つ作品には否定的だった『ガロ』の読者や水木しげるも、この作品には肯定的です。

主人公の釣り人の青年は、店番をしているおかっぱの少女に釣り場を訪ねます。すると少女は、同級生の少年を案内人として紹介しました。少年に案内された釣り場で、青年は名も知らぬ紅い花を見つけます。すると、あのおかっぱの少女の体からも紅い花が現れ出てきました。

紅い花は、雄大な自然と少女の初潮を題材にした抒情世界が魅力の作品です。つげ義春の代表作のひとつで、1976年にNHK『土曜ドラマ』枠内でドラマ化もされています。

主人公の少年は、メメクラゲにより静脈を切断された左腕を押さえながら「医者はどこだ」と不可思議な漁村を彷徨います。不条理で奇怪な出来事が起こりながらも少年は女医に出会い、無事に手術（シリツ）を受けられました。

ねじ式は、つげ義春を『芸術漫画家』にのし上げた最も有名な作品です。独特のシュールで前衛的な作風は、有名人や著名人にも多くのファンがいます。得体のしれない不思議な体験をしたような気分に浸りたい方におすすめです。

方言に興味を持って旅に出た主人公は、居酒屋で働くおかっぱの少女・チヨジと出会います。チヨジは、赤い靴を賭けて居酒屋の客たちとある勝負をしていますが、いつも負けてしまうと聞きました。客の「それ、かんばれチヨジ！」の声を聞いた主人公は、「がんばれチヨジ！」と左手を上げて立ち去ります。

もっきり屋の少女は、つげ義春の『旅もの』に分類される作品です。『沼』や『紅い花』に登場するおかっぱの少女の、未成熟なエロスと抒情性が描かれています。

自称「芸術漫画家」である主人公の助川助三は、かつては有名な漫画家でした。しかし漫画の仕事も減って、高いプライドから仕事を断るなどで貧しい生活を送っています。助三は漫画以外の生きる道として採石した石を「石のオークション」に出品しますが、ひとつも売れずに家族で絶望するのでした。

無能の人は、『石を売る』からのシリーズ連作のうちのひとつです。つげ義春作品の大ファンである竹中直人の初演出作品として、1991年に映画化しました。

つげ義春作品は、『ねじ式』などの不条理な夢ものとは対極にある旅ものも人気です。旅情に溢れた奥深い旅ものは、すべて実在の場所をモデルにしているため聖地巡礼などの楽しみもあります。

つげ義春は、2022年に日本芸術院の新設分野『マンガ』の初代会員に選出されました。日本芸術院とは、美術・文芸・音楽・演劇など芸術のさまざまな分野の功績顕著な芸術家を優遇するための栄誉機関です。

会員は120人以内の終身制とされていて、つげ義春は今回の選出について「漫画界にいい影響があれば」と語っています。

この記事では、つげ義春の代表作や人気おすすめ漫画を紹介しました。つげ義春のシュール＆エロスな独特の作風は、不可思議な世界を旅したような気持ちにさせてくれます。不条理で夢現な世界を垣間見たいときには、つげ義春の漫画を読んでみてください。

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