直木三十五の小説おすすめ10選｜読み方や逸話も詳しく紹介！

直木賞を知っていても「直木」が誰を指すのか、知る人は少ないようです。芥川賞と双璧をなす文学賞ながら、直木賞の由来となった直木三十五という小説家は、あまり知られていないのが現状です。

直木賞は、”直木三十五賞”が正確な名称です。大正期から昭和初期に活躍した直木三十五は、大衆小説作家、歴史小説家として世間を熱狂させますが、実態は破天荒な自由人でした。特に身の丈を超えた浪費癖は生涯続き、死んでからも友人の菊池寛にとても世話になりました。

思うままに生きながら人々に愛された直木三十五の名前の読み方から、その小説についてまとめました。おすすめの小説だけでなく、最後には直木三十五を知るための本も上げています。

直木三十五の本名は”植村宗一”。名字の「植」を分解して「直木」のペンネーム苗字としました。名前は年齢を名乗り、「三十二」「三十三」と続いていましたが、34歳のときに編集者が「三十三」としても訂正せず、35歳の時に「三十五」と名乗りました。

以降は”直木三十五”で固定。菊池寛に怒られたなどのいくつかの理由が、逸話として残っています。読み方は「さんじゅうご」が正解です。

直木三十五が小説を書いた期間は10年ほど、世に出てからは、わずか5年ほどで世を去っています。25歳から43歳で亡くなるまで、ほほ居候生活で、周りに迷惑をかけつつ文筆活動を続けます。

「ツケや借金を返すために膨大な仕事を量産する」という逸話を持つ、素顔は残念な人。亡くなった後、新聞記事に「文壇一の借金王」と書かれてしまいました。

売れっ子小説家の直木三十五が亡くなったとき、約四千円の香典が集まりました。現在の約一千万円相当です。ところが、菊池寛が残った借金を調べると、山のように出てきました。総額は香典の約4倍。死ぬ直前の原稿料を当てても焼け石に水です。

菊池寛は主宰していた文藝春秋で追悼号や全集を計画し、借金が減るように残された家族のために尽力しました。

直木三十五が世間に知れた最初の小説が、『由比根元大殺記（ゆいこんげんだいさつき）』。3代将軍徳川家光と忠長の兄弟対立を描いた作品です。また、代表作の『南国太平記』は、薩摩藩のお家騒動を題材にしました。

大衆の興味を引く、歴史上のスキャンダラスな出来事を題材に選び、エンターテイメント性を持たせ、大衆小説を書きあげました。

現在でも水戸黄門は全国漫遊したと思っている人が多くいます。また、薩摩の「お由羅騒動」が描かれるときには、必ず呪いが登場します。実は、これらは直木三十五の小説が元になったフィクションです。

テレビドラマの『水戸黄門』の原作といわれるのが、『黄門廻国記』。『南国太平記』では、薩摩藩のお家騒動を描いた物語で初めて、呪術師を登場させました。

直木三十五の書いた戦いのシーンは、多くの人々をひきつけました。武術や剣法については、さまざまな流儀を細かく取材するほどこだわり、「ありふれた立ち回りとは趣を異にする斬り合いを目指した」と本人が語っています。

直木三十五の迫力のある立ち回り描写は、その後の歴史小説作家にも大きな影響を与え、現在にも受け継がれています。

直木三十五の小説は、とても句点（、）が多い文体で書かれています。代表作の『南国太平記』は、「高い、梢の若葉は、早朝の微風と、和やかな要項とを、…」と始まります。識字率が低い時代に、読みやすいように心がけたのでしょう。

この句点の多さは、リズム感を作り、小説を読みやすくするとともに読者を引き付ける力を持っています。

直木三十五は、晩年になると”書けば売れる”売れっ子作家でした。借金があろうと浪費する破天荒な生き方でしたが、大衆は直木を支持しました。

没後、大衆小説を作り上げたとして、菊池寛が芥川賞とともに作ったのが「直木三十五賞」。直木三十五賞は直木賞とも呼ばれ、現在も大衆文学の長編小説か短編集に与えられ続けています。

直木三十五の小説を読んで魅力を知ったり、自由奔放な生き方に興味を覚えたら、直木三十五を書いた本もおすすめ。直木三十五の考え方や破天荒な逸話も詳しく知れます。

• 『知られざる文豪　直木三十五：病魔・借金・女性に苦しんだ「畸人」』
• 『直木三十五伝』
• 『この人　直木三十五ー芸術は短く貧乏は長し』
• 『直木三十五入門』

直木三十五の命日は「南国忌」といわれます。代表作の『南国太平記』によりますが、これを原作にした映画が、同時に2社で作られ同日に封切されたほど、人々を熱狂させました。時代劇や刀剣が好きな人には、直木三十五の小説を堪能しましょう。以下の記事もあわせてご覧ください。