永井荷風のおすすめ小説8選|記念館や作風・有名作品まで詳しく紹介

永井荷風（ながいかふう）は1879年に東京都で生まれた作家です。とても美しい文体と自由な作風の作品を世に知らしめたことで有名です。エリートの父親のもとに生まれ、海外遊学もしているほど博識ですが、本人はやや風変りな男性であったといわれます。

まだ一般人には留学が難しい時代に海外へ渡った作家で有名なのは夏目漱石と森鴎外ですが、実は永井荷風もアメリカ・フランスで学びました。その海外経験を記した作品が大ヒットし、知る人ぞ知る名作家になっています。

この記事では、永井荷風についてその人物像や作品の特徴・作品を選ぶヒント・おすすめの作品などをわかりやすくご紹介します。個性的な作家・永井荷風に注目して作品を楽しんでみてください！

永井荷風は耽美派を代表する作家です。耽美派とは、19世紀後半に西洋で盛んになった文芸思想で、世の中の常識よりも美を追求した文学を指します。そんな作風の永井荷風について詳しくご説明していきます。

永井荷風は官僚の父と芸事に詳しい母を持ち、何不自由なく育ちました。著名な学者や芸達者からいろいろな事柄を学び、エリート学校に通っていましたが、あるとき病気をし、休学します。休学中に読書にのめり込んだ経験が、のちの永井荷風の作家人生につながります。

24歳のころには父のすすめでアメリカへわたり、帰国して銀行勤めをしますが、またフランスへ遊学に行きます。

永井荷風は耽美派の中でも孤高の耽美派といわれ特別視をされています。その理由として挙げられるのが、実家に勘当されても芸鼓遊びの美しさにハマってしまったり、結婚と離婚を繰り返したのち「編奇館」と呼ばれる住居で独り暮らしたりしたことなどによります。

自分が美を感じる事柄へのハマり具合がハードだったといえます。

永井荷風は自分が書きたい欲望にかられると赤裸々に物事を書く性格で、読者からすればその良さには賛否両論があり、現在でも好き嫌いがわかれやすい作品が残っています。例えば親類についてあまりよそに漏らすべきでないことを書き、絶縁されるほどです。

また、エロチシズムに大きく傾いた表現なども多いのが、好みの方には堪らない作風でもあります。

永井荷風の作品は、夏目漱石や森鴎外からかなりの賞賛を浴び、世の中から注目されています。夏目漱石を尊敬していた永井荷風は自分の感覚に自信を持ち、なお執筆に励みました。また、永井荷風が見出したのは谷崎潤一郎です。

谷崎潤一郎も歴史に残る耽美的な小説が有名な作家で、まだ本を世に出していない折から、永井荷風の評を受けて出世しています。

永井荷風の作品を選ぶのに重要なポイントは「ジャンル」「長さ」「映像化・演劇科・漫画化」「時代」の4つです。いずれも作風は永井荷風独特の個性が大々的に出ていますが、それぞれ特徴が異なると知っておきましょう。

永井荷風が得意とする作品ジャンルから、読む作品を選ぶ方法をご紹介します。永井荷風は「耽美的小説」「赤裸々なエッセイ」「海外遊学もの」の3つがイキイキ書かれているジャンルになります。

永井荷風と女性とのなまめかしい関係性や描写は、実体験を活かしているといわれています。永井荷風は16歳で入院した際に出会った初恋の看護師の名前をペンネームにするほどにセンシティブな人間性です。

芸妓遊びでも娼婦遊びでも、遊びではなく本気でハマってしまう永井荷風の繊細な感性を感じられます。

永井荷風が40年以上に渡り日常の赤裸々を綴ってきた『断腸亭日乗』は、エッセイとして最高傑作であると評されています。37歳から亡くなる前日までの日々の記録が記されており、銀座や浅草での遊びのみならず、お金があるのになかなかのケチな様子まで自分で書いています。東京の歴史が詰まっているような面もあり必読です。

まだうら若き永井荷風が自然主義文学を嗜んでいた時期の、約5年間に渡るアメリカ・フランスでの体験をもとに書いた短編小説集では、永井荷風の爽やかさを堪能できます。『あめりか物語』と『ふらんす物語』は、永井荷風の名が有名になるきっかけともなっています。

フィクションの形ではありますが、永井荷風自身の海外体験が織り込まれています。

永井荷風の作品を楽しむにあたって、どれくらいの長さであるかを考慮するのもおすすめです。短編か長編かで作品を堪能する気分も変わりますし、余暇の時間を上手に使えるので便利です。

短編・短編集は、永井荷風の作品が初めての方でも気軽に読み始められておすすめです。耽美的な表現は別と考えても、永井荷風の文体はそもそもが整っていて読みやすいため、有意義な短時間の使い道としてストレスもないので、ぜひおすすめします。

短編集を1冊買えばさまざまな作品を好きなときに読めます。

永井荷風が本腰を入れて書き上げた長編には有名作品も多く、彼の個性的な世界観を十分に堪能できるのでおすすめです。長編では、内容の濃さも相まって続きがとても気になる作品が勢ぞろいしています。

文章の流れの美しさと内容の面白さが味わえるので、時間があるときに読んでみてはいかがでしょうか。

永井荷風の作風は映画化や演劇化でいい意味で大仰に表現するのにも向いているため、多くの作品がエンタメ化されています。映画化で有名なのは娼婦との関係性を描いた『墨東奇譚（ぼくとうきたん）』で、演劇化では『夢の女』が人気です。

もとはゲームですが『文豪とアルケミスト』にも永井荷風のキャラがあり、二次創作などでも大人気です。

他の文豪の例に漏れず、永井荷風も時代によって作品の雰囲気が異なります。作家として経験を積み始めた頃と脂が乗り始めた時期、また、落ち着きを踏まえた後期で作風が変わるのもまた楽しいです。

永井荷風には家柄の良さも備わっていたので、若いうちに海外経験を積むことができました。当時、海外経験のある作家の中でもとりわけ永井荷風に注目が集まったのは、ヨーロッパではなくアメリカでの滞在経験があったからです。

アメリカはまさに人種のるつぼを実現していた時期で、この時期の作品には多様な人間に触れた経験が活かされています。

もともと金銭的には困っていなかった永井荷風も、文壇で名を馳せるといった興奮は刺激的だったようで、中期には気合の入った代表作が次々に発表されました。他の作家にはない作風と文豪たちからの推薦によって一躍人気作家になった時期です。

雑誌『三田文学』を創設し、新人作家の後押しをするような暗躍ぶりもありました。

慶応義塾大学の教授の役職も得ていた永井荷風ですが、自らの耽美主義を貫く姿勢が周囲との軋轢になり解雇されます。本格的な風俗遊びを始めたのもこの時期で、プライベートでも独身となり、永井荷風の個性的なこだわりが発揮されるようになります。

また、戦時の最中での不幸や変化も加わり、後期の作品は味わいの濃いものが増えました。

永井荷風が晩年住んでいた「編奇館」とされる自宅は戦争で焼け落ちてしまいましたが、現在では編奇館跡として見学ができます。生家の跡や断腸亭跡などの記念館は、ファンには見逃せない場所となっています。

また、生誕140年や没後60年などの定期的な展示会も盛んに開催されますので、記念の年にはぜひ訪れてみてください。

永井荷風について、その独特な作風の特徴や作品の選び方、おすすめ作品などを丁寧にご紹介しました。一風変わった作風の永井荷風の作品を読んで、新しい気付きやアイデアのヒントにしてみてください！

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