向田邦子さんの小説おすすめ5選｜家族や日常をテーマにした有名作品の数々を紹介！

向田邦子さんは昭和を代表する作家の一人です。特に脚本家としての活動が多く、『寺内貫太郎一家』など昭和の人気ドラマの脚本を多く手掛けてきました。彼女の作品には、ドラマの脚本を小説化したものも多くあります。

唯一無二の視点で紡がれた物語は、40年以上前に書かれたとは思えないほど実に鮮やかで、今でも人々の心をとらえて離しません。芸能人や小説家など、著名人にも多くのファンがいます。

この記事では、向田邦子さんの小説の特徴や人気の理由、選び方について解説します。おすすめの小説もピックアップしました。また、少しですがおすすめのエッセイも紹介しています。向田邦子さんを知らない若い世代にも読んでほしい作品ばかりです。ぜひ最後までご覧ください。

向田邦子さんの小説は、家族や日常といった普遍的なテーマを扱っているのが特徴です。小説の舞台となっている時代や背景は異なるものの、描かれている人間模様には時代を超えて共感できる点がたくさんあり、物語の世界観に没頭できます。

向田邦子さんのエッセイにも、日常の些細なエピソードが多く登場します。何気ない日常を大切にしていた彼女だからこそ、時代を超えて人々の心に響く作品を作れたのだと考えられます。

向田邦子さんは鋭い観察眼で物事を多面的に捉え、いい面や悪い面、いいとも悪いとも言えないグレーな面も巧みな表現力で的確に描きます。重苦しいシーンの中に気が抜けるような出来事が起こるなど、シリアスとユーモラスのバランスも秀逸です。

人間の優しさやたくましさだけでなくずるさや弱さも包み隠さず描きますが、温かみのある文章のおかげで、欠点もいとおしく感じられます。ハッピーエンドではないのに後味の悪くない物語を書けるのが、向田邦子さんの魅力です。

平均視聴率30％超えの昭和の人気ドラマ『寺内貫太郎一家』を小説化した作品です。東京の下町にある石屋「寺内石材店」を舞台に、人情劇が繰り広げられます。

主人公の寺内貫太郎を始め、登場人物がみないきいきと描かれています。表情や声の大きさ、物音なども頭の中で再生できるくらい表現が鮮やかです。昭和を過ごした大人世代には懐かしく、知らない若い世代には新鮮な気持ちで楽しめます。

1980年に放送されたテレビドラマの脚本として執筆され、1981年に小説化されました。1989年には映画も公開されています。

日中戦争に差し掛かる頃の東京を舞台に、とある夫婦とその妻に恋する夫の友人、3人の人間模様を描いた作品です。圧倒的な表現力にぐいぐい引き込まれ、長編小説ですがあっという間に読み進められます。

直木賞受賞作『花の名前』『犬小屋』『かわうそ』を含む全13編の短編小説です。夫婦や親子などの人間関係を通して、人間の弱さを描きます。

ぞっとするような醜さや狡猾さもストレートに表現しているのに、ただの「嫌な人」では終わらせない愛情深さが感じられるのが向田邦子さんのすごいところです。1作品15ページほどですがどれも内容が濃く充実感があります。

絶筆となった『春が来た』を含む5編の短編小説が収録されています。それぞれ主人公や舞台は異なりますが、どの作品も女性の心の動きを丁寧に描いており、切なさやあたたかさを感じられるのが特徴です。

わかりやすく緻密な描写のおかげで情景がはっきり目に浮かびます。まるで短編映画を観ているような感覚になる作品です。

向田邦子さんの小説の朗読CDもおすすめです。短編集の朗読がメインですが、中にはエッセイの朗読や向田邦子さん自身の声を収録したCDもあります。

岸田京子さんや加藤治子さんといった昭和の名女優による朗読は、表現力や間の取り方などが素晴らしく聞き入ってしまいます。小説とあわせて楽しんでみてはいかがでしょうか。

少女時代の思い出を記した、エッセイの「真打」とも呼ばれるほどの名作です。家族に関するエピソードが向田邦子さんならではの視点で切り取られ、テンポよくそしてユーモアたっぷりに語られています。

小説と同じく鋭い観察眼や巧みな表現力も遺憾なく発揮されており、昭和を知らなくても昭和の家庭の様子がありありと想像できます。

『父の詫び状』に続く第2作目のエッセイです。初版は1979年ですが、古さを感じさせない感性に驚かされます。

エッセイには向田邦子さんの聡明さやかわいらしさ、あたたかさといった人柄が表れています。小説よりも気軽な気持ちで読めるものの、心にしみる話も多いです。1985年には収録されているエピソードを元に、ドラマが制作されました。

『字のない葉書』は教科書に掲載されていることもあり、若い世代にもよく知られている著作の1つです。原作は上で紹介した『眠る盃』に所収されていますが、絵本にもなっています。

絵本の文は角田光代さん、絵は西加奈子さんと人気の小説家2人が担当しています。挿絵があるため子どもでも読みやすいのが魅力です。親子で一緒に読んでみてください。

家族や日常をテーマとし、人間模様を丁寧に描いた向田邦子さんの小説は、現代でも共感できる点がたくさんあります。映画やドラマを観たような充実感もあり、何度も読み返したくなるのも魅力です。本記事を参考に向田邦子さんの小説を選んで、お気に入りの1冊を見つけてください。