清水清三郎商店 日本酒 作

三重県鈴鹿市は鈴鹿山脈からの湧き水と、伊勢平野の豊富な米が入手できることから、古くから酒造りで有名な場所です。最古のものでは、天照大神(あまてらすおおみかみ)の命を受け作られたといわれている「倭姫命世記」(やまとひめのみことせいき)に味酒鈴鹿国(うまさけすずかのくに)の記述が見られます。さらに江戸時代には造った酒を江戸や大坂へ運ぶ海上交通も発達し、酒造りに恵まれた土地となりました。かつては多くの酒蔵があったといわれていますが、現存する唯一の蔵元である「清水清三郎商店」の代表作が「作」シリーズです。

明治時代に始まった全国新酒品評会は、全国の酒蔵が優れた日本酒を競い合ってきた由緒正しい品評会です。現在も日本酒の最も権威ある品評会として認められています。品評会に出品する際には、総米600kg~800kg程度の通常よりも小さな発酵タンクを使用して仕込みを行います。なぜなら、この規模が麹と蒸米の状態や酵母の働きにちょうどいいといわれているからです。量産できないため多くの酒蔵では採用されていませんが、清水清三郎商店では、大吟醸だけではなくすべての種類の酒を小さなタンクで行うことにより高品質な酒を目指すことを目標としています。

現代では、どこで飲んでも変わらない味の飲料、同じ形の野菜、果物などが主流になっており、日本酒も、年間を通じて同じ味わいを出荷することを目指しているメーカーが多いです。本来、日本酒は天候や季節で味わいが変化するものです。畑の野菜のように天候や季節で味は変わりますが、それぞれに美味しいと感じるように、その時々にできることをすべて行い、最高の品質の酒を造ることを目標としているそうです。米の命を生かし続ける酒の造り方によって、時間とともに変化していく日本酒造りを行っています。

酒造りは、1.麹（こうじ）2.酛（もと）３．醪（もろみ）によって変化します。中でも、麹造りは技術の差が出る工程と言われています。いい麹を作るためには、その時々によって乾燥具合の違う米秒単位で水に漬ける時間を管理し、目標とする浸漬度合いに管理する必要があるからです。家庭で炊くご飯の精米歩合は95%なので、長く水に漬けておいてもある一定以上の水分を吸収することはありませんが、精米歩合が小さい米になってくると、60%、50%、40%と歩合が小さければ小さいほど急激に水分を吸収してしまいます。ここで、杜氏が手で触れて水の温度を確認し、量りで重量を確認しながら米を水に漬ける時間を調整するのです。これが、大変難しく、熟練した職人技が必要と言われています。

「作」シリーズでは、一部の酒を除いて使用米などのスペックが公開されていません。飲む人やそれを提供する人たち、出会った皆で作り上げる酒という願いが込められているそうで、飲んだ人に味を純粋に感じてほしいということだそうです。飲む人、提供する人の、出会う場所によって味わいが変化する「作」の魅力の一つですが、スペックの数字に驚かされて日本酒の深さをさらに勉強しようという方もいるので、少しもったいないですね。

吸水時間や小規模での仕込みにこだわっているため、仕込み量は800kgから1200kgだそうです。6日に1本作るというローテーションで行っているため、市場に出回る量が圧倒的に少なくなってしまします。現在は、1年を通して製造する四季製造になったそうですが、造りはたった3人で行っているそうなのでプレミアがつくのも仕方ないですね。お目にかかったらぜひ購入したいですね。

作 恵乃智 純米吟醸酒は、火入れされたお酒ですが、開栓後の変化が大きいとの口コミがありました。1日目は米の香りですが、2日目からは酸味や甘みが強くなるようです。3日目以降は、酸味や苦みが増してくるようです。個人の好みに合わせて、開栓後の時間調節が必要そうです。

「作」レギュラーシリーズの中で、作 恵乃智 純米吟醸酒は唯一自社保存酵母が使用されています。この自社保存酵母が決め手となり豊かな香り、軽快な味わいが特徴的です。ライチや洋梨のような甘く爽やかな香り、と表現されている口コミが多かったです。

清涼感のあるキレイな後味が特徴的です。食事やつまみの邪魔をしないところがいいですね。ボトルを冷やして飲むのがおすすめとの口コミがありました。また、SNSにはワインのように白ワイン用のグラスで味わっている方も多いようです。

酸味、甘味、後味のキレが整った作 恵乃智 日本酒は、魚介類や野菜などどんな料理とも相性が良いようです。特に、牡蠣やおでんなどと合わせると最高、との口コミがありました。バランスがいいお酒なので、シーンを選ばずに楽しむことができそうです。

「SAKE CONPETITON」は、市販酒を対象とした世界最大級の日本酒コンペティションです。2012年から始まり、7回目となる2018年は約455蔵、約1700種類が出品されました。カテゴリーは、純米大吟醸部門、純米吟醸部門、純米酒部門、吟醸部門、Super Premium部門、発泡清酒部門、ラベルデザイン部門に、新設された「海外出品酒部門」を加えた合計8部門あります。作 恵乃智 純米吟醸酒は、純米吟醸部門の第一位に輝きました。世界が認める日本酒ということですね。

「作」シリーズの人気商品には、作 恵乃智と作 雅乃智 中取りの2種類があります。この2つはどのように違うのでしょうか。違いを見ていきましょう。

まずは、日本酒の作り方の違いです。日本酒は、醪（もろみ）を搾って日本酒と酒粕に分かれます。日本酒は、搾ったときに3つの部分に分かれます。搾り始めは「あらしばり」と言われ、ワイルドでキレがあり、フレッシュな香りが特徴です。中間は「中取り」と呼ばれ、少し圧力をかけて出てきたお酒です。透明でバランスがよく、クリアで落ち着いたまろやかな味わいが特徴です。日本酒を作る上で、もっとも品質のよい部分とされています。品評会などに出品されるのは、この中取りの日本酒が多いようです。最後は「責め」と呼ばれ、圧力をかけて搾り出すので力強く濃い味わいが特徴です。作 雅乃智 中取りは、日本酒の一番いい部分を瓶詰めした自信作と言えるでしょう。

作 恵乃智と比較すると、価格が倍程度するのが難点です。元々コスパがいい商品なので、他のメーカーと比べると安く、検討する商品に入るでしょう。贈り物や記念日など、特別な時にはこちらも合わせてチェックしてみてください。