南木佳士の小説おすすめ10選｜急須・歩行などを紹介｜エッセイのおすすめも

芥田川賞を受賞した経歴を持つ、南木佳士は小説家でありながら、現職の医師として働いています。医師として多くの患者に向き合い、その経験から描かれる小説は読む人の心をいたく感動させる物語になっています。

医療小説は生と死を描く難しいジャンルになります。南木佳士の作品は現場を見ているものだからこそ書けるストーリーです。登場人物の心、行動のすべてにリアリティがあります。まるで自分も現場に居合わせているかのようです。また、南木佳士の見てきた医療現場を詰め込んだエッセイ集も人気を集めています。

この記事ではそんな南木佳士の医療小説のおすすめをご紹介します。医療小説に興味がある方、人の生死についての小説を探している方は、ぜひご一読ください。

南木佳士の人生は常に「死」というものが近くにある人生です。子どもの時に母を結核で亡くし「死」に対する恐怖や不安が潜在的に刷り込まれていきます。この頃から、医師になることを志していたと振り返る場面もありました。

作家を志したのは佐久総合病院で働きだしてからです。多くの重症患者を診る立場になり、「人の死」に直面する場面が増え、自己開示の場として執筆に向かいました。その後、芥川賞を受賞することで小説家と医師の仕事の両立で多忙を極め、うつ病・パニック障害を発病します。

現在はうつ病・パニック障害も寛解し、医師を退職したのち奥様と登山をしたり人生を謳歌しています。南木佳士の描く人生そのものを知ることのできるのは、彼の描く小説です。

南木佳士の作風は人の生死を題材にした医療小説で、生と死をありありと描いた深い小説が多くあります。作品の題材は自身の経験による内容が多く、よりリアリティある深い小説となっています。また、南木佳士自身のうつ病・パニック障害の克服経験や、療養期間に訪れた信州の自然の美しさを題材にした小説も人気です。

南木佳士の小説でおすすめの小説は、芥川賞を受賞した『ダイヤモンドダスト』です。文学賞に選ばれるということは、文学的にも認められ、多くの人に感動を与える作品であること間違いありません。他にも、短編小説では泉鏡花文学賞を『草すべり、その他の短篇』で受賞しています。

医療小説の題材としては、医師が主人公か看護師が主人公かによっても物語が異なってきます。特に南木佳士が大切にしている死に向かう人、寄り添う人を題材にした作品は評価が高く一度は読んでおきたい作品です。他にも、雄大な自然を題材にした『山行記 』、精神病にフォーカスを当てた『阿弥陀堂だより』など気になる題材を選んで読むと楽しいですね。

南木佳士は長編も短編も手掛けています。『陽子の一日』のように長編小説は登場人物の人間関係、悩み、医療に対する気持ちなどがありありと描かれており、一人の人生を知る楽しみのある作品です。『草すべり』などの短編小説はあるワンシーンを切り取り、物語の前後で主人公がどのような人生を送ってきたのか、想像を駆り立てられる作品です。

南木佳士の小説のうち、2作品『阿弥陀堂だより』と『山中静夫氏の尊厳死』が映画化されています。映画を見てから小説を読むのもまた違った目線で見られるのでおすすめです。小説から映画を見てもメディアの違いや解釈の違いを感じられます。

1989年に芥川賞を受賞した作品です。妻を病で失った看護士の和夫が主人公になります。和夫の視点を通して、周りの人間が生き、老いて、死んでいく死生観を問う小説です。和夫のもとに、末期がんの宣告を受けた宣教師・マイクが入院してきます。マイクとの会話の中で和夫の心に変化が起こります。

2002年に映画化された南木佳士の小説です。映画のキャッチコピーは「忘れていた、人生の宝物に出逢いました」です。まさに人生の宝物とは何かを夫婦で見つける心温まる小説です。

妻がパニック障害の診断を受けたことで、自然豊かな山村で暮らし始めた一組の夫婦の物語です。田舎での生活は穏やかに過ぎ、その中の1年間を描きました。村人との交流から「生きること・死を迎えること」を肌で感じていく物語です。

うつ病を題材にした南木佳士の小説です。介護に疲れた心を癒してくれる動物のすばらしさ、家族愛について描かれています。老いた父を介護する家族のもとに迷い込んできた野良猫のトラを中心にした物語です。主人公は子供たちに後押しされ、野良猫であるトラを家族に迎えます。介護をする傍ら、主人公を癒す存在としてトラは家族にとってかけがえのない存在になります。

関東大震災で3か月の入院を経験したことで医師を志した・若月俊一の生涯をノンフィクションで綴った作品です。佐久の小さな診療所に赴任した若月俊一は、地域医療の構築のため奔走します。そこで見えてくる、医療現場の矛盾にぶち当たります。その後は大病院へと成長する過程を記した、医療従事者のための作品です。

医療従事者はもちろん、他の人も医療とはどうあるべきかを考えることができる作品になっています。地域医療と大病院の重要性を考える作品です。

南木佳士の集大成ともいえる短編集です。私小説ともいえるこの作品には、南木佳士の医師としての人生が描かれています。また、この小説では医師を退職した後の生活にも触れられているので、新鮮で穏やかな文章も見て取れます。過去の作品のような硬い文章ではないのも、楽しめるポイントになっています。

南木佳士のエッセイは、医療現場を綴ったものだけではありません。日々の日常の当たり前を綴った何気ない気づきも入れられています。特に『猫に教わる』のエッセイ集では、猫の母子を見てごく普通の生活を送る大切さについて触れられています。

小説からはわからない南木佳士の人生や価値観、哲学を知りたい方はエッセイを読んでみると彼の考えを理解できるかもしれません。エッセイから「死」や「病気」に対する考えを読みとると新たな倫理観を見つけることができます。

死生観は人が生きていく中でどこかで考えるものです。南木佳士の小説をきっかけに死生観について考えてみてはいかがでしょうか。また、「死」を通じて何かを知りたい時にもエッセイや小説から答えが見つかるかもしれません。一度自分の人生を見つめなおすきっかけとして、ぜひ南木佳士の小説を手に取ってみてください。

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