色川武大の小説おすすめ5選｜ペンネームを複数持つアウトロー作家！『百』など

色川武大（いろかわたけひろ）は、昭和の最後の「無頼派」ともいわれるアウトローな生き方をした作家です。文学カテゴリーごとにペンネームを変え、さまざまな名作を書き残しており、自らを劣等性と呼んでいましたが直木賞まで受賞した偉大な作家でした。

色川武大の生き様は、たしかに凡人には理解し得ないハチャメチャさでしたが、本人にとっては、ギャンブルも麻雀も執筆もすべてにおいて真剣に取り組んでいた事柄であり、持病に悩まされながらも精力的に人生を謳歌しています。

この記事では、アウトロー作家・色川武大について、作風にまつわるエピソード・作品の魅力・代表作の特徴・おすすめ作品などを詳しくご紹介していきます！

色川武大はいろいろなペンネームで別々のジャンルの作品を執筆しました。作風に関わる生い立ちや、ペンネームについて詳しくご説明をしていきます。ぜひ作品選びの参考にしてください。

色川武大は、1929年に現在の東京都新宿区の土地に生まれました。元海軍大佐だった厳格な父は、色川武大と弟を叱るときに鞭を使ったそうで、のちに家族内での父との思い出が小説のテーマとなります。学校を無期停学になってからは、闇屋や博徒などを転々としました。

もとは遠縁の親類だった妻に「怪物のような色川と暮らしてみたい」と言われ結婚しました。

色川武大は本名です。本名では主に純文学を書き、阿佐田哲也というペンネームでギャンブルやアウトロー的な小説を書いています。また、井上志摩夫名義では時代小説も手掛けるなど、多彩な執筆をおこなっていました。

出版社によっては「いろかわたけひろ」でなく「いろかわぶだい」となっていますが、これは本人の指示とのことです。

阿佐田哲也のペンネームは、麻雀で徹夜を繰り返していた時期に本人が「朝だ！徹夜だ！」と叫んだことから生まれた名前です。さらに、本名の武大は、父親が中国の有名小説『金瓶梅』からとったと本人が生前明らかにしています。

『金瓶梅』の武大は、広東語では「寝取られ男」の意味となり、父親の感性も凡人には計り知れません。

色川式大の作品の特徴には「アウトロー生活の中でも執筆には真摯」「読みやすい文体」「受賞歴の凄さ」「映画化・漫画化」などがあります。順番にご説明をしていきますので参考にしてください。

結果的に中学校で学業を終えた色川武大ですが、自頭がよく、真面目な性格だったため、その後は自力で人生のいろいろを学びます。博打修行に打ち込んだ時期には「ツキの流れに従う」等の人生哲学を身に付けます。

世間では遊びの認識しかなかった麻雀を極め、著書「麻雀放浪記」が大ヒットすると麻雀が知的なゲームとして広まりました。

色川武大の文体は、語りかけてくるような突き放されるような絶妙なスタンスで書かれています。飄々とした語り口で読みやすいのですが、よくよく考えるととても人間らしい内容になっていて、気取らずに大切な事柄を述べています。

登場人物はアウトローな人間が多く、アウトローの中の美学が滲み出ています。

唯一無二の存在感と執筆力で、色川武大は多くの文学賞を受賞しました。父との記憶を描いた『黒い布』では中央公論新人賞を、『怪しい来客簿』で泉鏡花文学賞を、さらに妻とのフィクションとノンフィクションを混ぜ合わせて書いた『離婚』で直木賞を受賞しています。

その他、『百』では川端康成文学賞・『狂人日記』では読売文学賞を獲っています。

麻雀ブームを引き起こした『麻雀放浪記』ならびに『雀鬼くずれ』が1984年・2002年にそれぞれ映画化されヒットしました。また、『麻雀放浪記』を原作とした漫画も描かれています。当時の麻雀ブームを牽引していたのは間違いなく色川武大でした。

また、北野英明の麻雀漫画『雀ごろブルース』も色川武大の原作です。

ここでは、色川武大の代表的な小説の詳細をご紹介します。『百』『明日泣く』『怪しい来客簿』『生家へ』『離婚』と、いずれもタイトルだけでも興味をそそる名作です。簡単なあらすじや魅力をご説明します。

100歳間際の父親と色川自身の関係性をテーマに描かれた短編集です。色川武大と父の関係は複雑で、父が44歳のときに生まれた色川は溺愛されて育ちましたが、色川の劣等生ぶりにやがて幻滅を示し始めます。元海軍大佐だった父の老けいく姿を描きながら、色川武大独自の描写で酷い父の孤独が美しく感じる名作です。

ジャズの曲『アイル・クライ・トゥモロー』のような人生はイヤだと言い、奔放に生きる女の光と影を描いた作品です。2011年に斎藤工をキャストに映画化されました。夢を見ながら崖っぷちを渡り歩く人間の強さと弱さが表現されています。

泣かない生き方をする女を見守るかのような男のストーリーです。

終戦後、主人公のもとに怪しい来客が訪れ始めます。さまざまな理由でこの世にいないはずの来客たちを、主人公が冷たくも優しくもせず、ただ受け入れます。この作品にも、色川武大の実体験が多々採用されており、リアルな描写に引き付けられます。

『怪しい来客簿』を読むと、色川武大の性根の優しさを感じます。

色川武大の作品の特徴でもある、虚実の入り混じるストーリー展開の純文学です。父への複雑な想いと実家への切っても切れない心のしがらみを握り続けながら、自分の居場所を求めて放浪する男の話が描かれています。

「子供のころのままで、生家へ帰りたい」といった、多くの人間の本音を丁寧に書き上げた作品です。

「あなたの妾になりたい」と願う女と結婚した男のひとり語りです。ふたりは2年付き合い、晴れて夫婦になると、今度はすれ違いで大揉めします。6年後に離婚をしますが、離婚後の仲の相性は抜群で、結局は一緒に過ごします。

語り部の夫の口調が軽快で面白く、妻への罵詈雑言から愛情のこもった言葉まですべてが秀逸です。

色川武大は多くの著名人・芸能人と交流がありました。きっかけは麻雀が多いのですが、おそらくその性根の良さから周りに人が集まったのでしょう。伊集院静は『いねむり先生』で色川武大と出会い大きな悲しみを乗り越えた経験を記しています。

エッセイではタモリの素人芸を高評価するなど、交友関係が非常に広い作家でした。

色川武大と聞けば、だれもが作品の素晴らしさと同時に、そのアウトローな生き方を思い浮かべます。王道を歩まずややはみ出した生き方をした、心優しいアウトローな色川武大の名言やエピソードをご紹介します。

色川武大の持病はナルコレプシーでした。ナルコレプシーは自身の意志とは無関係に突然眠気が訪れてしまう病気です。この病気に色川武大は大いに悩まされ、麻雀で自分のターンが来る間によく眠りに落ちてしまうほどでした。

『いねむり先生』では登壇中に寝てしまう様子も描かれ、生活の乱れは必至の人生でしたが、本人のキャラのひとつとして愛されたポイントでもあります。

色川武大の名言は多数ありますが、最も彼がよくわかるのは「私はおのれ自身を苦笑することをだんだん本格的に覚えて、劣等性として微塵も揺るがなかった」といった発言です。父親に幻滅された悲しみと現実との狭間で、培った強さを表しています。

自分を大きく見せたり開き直ったりすることなく、真剣に生きた作家です。

色川武大について、生い立ちや作品の魅力・代表作品の特徴・おすすめ作品・エピソードなどを詳しくご紹介しました。ぜひ記事を参考に、色川武大の真摯な生き方が現れた素晴らしい作品を楽しんでみてください！

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