森鷗外の作品おすすめ10選｜どんな人物？・代表作や有名作品・最高傑作も！

明治・大正時代に一世を風靡した文豪・森鷗外。学生時代、授業で彼の作品に触れた人も多いと思います。近年は人気ゲームの主人公としても取り上げられており、さらに多くの人に親しまれています。

森鷗外は陸軍軍医を経てドイツ留学し、作家として『舞姫』『山椒大夫』など、数々の有名作品を生み出しました。そんな彼が遺した文章は、100年たった現在でもたくさんの作家・読者に愛され続けています。

時代が移り変わっても色褪せない簡潔さと気品を兼ね備えた表現が、森鷗外の持ち味といえます。今回は、そんな森鷗外のおすすめの作品を、代表作や最高傑作も含めて10冊ご紹介します。選び方も解説するのでぜひ参考にしてみてください。

森鴎外は1862年2月17日生まれの日本を代表する作家のひとりで、明治・大正時代にかけて小説家や陸軍軍医として活躍しました。本名は森 林太郎（もり りんたろう）で、鴎外はペンネームになります。また、国の官僚として数々の勲章も授与されている変わった経歴の人物です。

陸軍で軍医を務めたあとに単身ドイツへ留学し、衛生学を本格的に学んでいます。帰国後には、異国の地で習得した情報をもとに医学ジャーナリストや翻訳家としても活動し、文学者に転身していきました。

1922年7月9日に60年の生涯に終わりを告げますが、はっきりとした死因は当時公表されていませんでした。ですが、直接的な原因は大正期に死の病と恐れられていた「肺結核」とされています。

森鴎外の代表作として名が上がるのが、『山椒大夫』『高瀬舟』の2作品です。山椒大夫は、人身売買を生業にしている人物から買われた姉弟の切ない物語になっています。お互いに励まし合いながらも懸命に生きぬき、両親を探す健気な姿が描かれています。

また、高瀬舟では、働いても暮らしが一向に楽にならない兄弟の悲劇を描いた社会派の短編小説です。現代の日本にも通ずるテーマがあり、非常に人生を考えさせられるおすすめの一冊です。

森鴎外の有名作品といえば、1890年に国民之友で連載が開始された『舞姫』です。自身のドイツ留学経験の手記をもとに描かれたもので、ジャンルは短編恋愛小説となっています。主人公の日本人男性・太田と、思いを寄せるドイツ人女性・エリスを中心にストーリが展開します。

舞姫は比較的初期の文学作品で、ドイツを舞台にした出会いや別れがロマンチックに記されています。

森鴎外の最高傑作と名高い著書が、自身の憧れともいえる人物を描いた歴史伝『渋江抽斎 』です。医学や哲学を学び、また詩人としての才能も持ち合わせていた渋江抽斎に、森鴎外は長年に渡って興味を抱いていました。

119節と膨大な量で納められた渋江一族の一代記を、事細かく調査しまとめた一冊です。現代人には困難な文体もありますが、森鴎外の目指すものや共通項を知るにはおすすめの史伝です。

森鴎外の作風は、なんといっても西洋文化を感じられるものが多いのが特徴です。翻訳家としても活躍していたという背景から、西洋を思わせるような雰囲気の作品を多く手がけました。また、日本社会を客観的な視点から、自身の思想を交えながら描いた物語が多いのも特徴です。

なお、古文で書かれた小説も多くみられます。文中にフランス語・ドイツ語などを見事に織り交ぜられた作品も人気があります。内容は人の善悪・罪など哲学的なものが多く、現代の日本人が読んでも共感できるものが多いのが魅力です。

まずは作品のタイプから、自分好みのものを探してみましょう。｢小説｣｢翻訳｣の2つに分けて説明していきます。自分がどちらの作品のタイプが好きなのかを考えながらご覧ください。

まずはオーソドックスとも言える｢小説｣。｢普段から小説を読むのが好き｣｢森鷗外の作品に触れてみたいけれど、たくさんありすぎてよく分からない｣「森鷗外の神髄は小説にあるのではないかと思っている」と思う方におすすめです。

森鷗外は生涯を通して、実に幅広いジャンルの小説を執筆しています。あまりにも取り扱っていたジャンルが多すぎて、読者も驚愕するレベルです。詳しくは後述しますが、きっとあなた好みのテイストの作品がみつかりますよ。

森鴎外の小説の表現力は、読書家が舌を巻くほどです。そのため、森鷗外が好きな方・興味がある方はぜひ一読してみてください。

森鷗外の｢翻訳｣は、質が高いと定評があります。彼は4年間ほどドイツ留学をしていたため、その経験が生かされていると考えられます。その綺麗な日本語訳は、当時はもちろん現在でも惹きつけられる人が多数います。

適切かつ読みやすい森鷗外の翻訳書は、今でも複数の出版社から販売されており、輝きを失っていません。｢翻訳書が好き｣｢ドイツ語の原作と読み比べて楽しみたい｣｢綺麗な日本語を堪能したい｣「翻訳者を目指している」と思う方におすすめです。

森鷗外が手がけた「歴史」系の小説は、気品のある文章が魅力的です。内容は奥が深く、考察がはかどるジャンルといえます。江戸時代・明治時代の空気感を肌で感じられるような作品が多く、この時代が好きな人には特におすすめです。

そのため、「小説を読んで作者の意図を読み取るのが得意」「強いメッセージ性を感じる作品が好み」と思う方が満足できるジャンルです。

また、過去にドラマ化・映画化・舞台化されたのもこのジャンルです。小説とあわせて映像作品も楽しみたい人も向いています。

森鷗外は「怪談」がテーマの作品も手掛けています。これは背筋が凍るほどのリアリティを誇るため、怖い話が苦手な人にはおすすめできません。あっさりとした語り口調が、ぽつりぽつりと話す語り部を前にしたような恐怖を彷彿とさせるためです。

逆に、とびきり怖い話は読みたい方にはぴったりのジャンルです。また、怪談話が活発になる夏の時期の読書にも向いているといえます。

森鷗外がどんな生涯を送ったか、その一部がわかる「自伝」。森鷗外に強い関心がある人や、ノンフィクションのお話が好きな人におすすめのジャンルです。

森鷗外が思い立って執筆したこの自伝は、独特の語り口に思わずのめりこんでしまう魅力があります。「とりあえず何か読んでみたい」と考えている人も、「森鷗外ってどんな人だったんだろう」と思っている人も、ともに満足できるクオリティとなっています。

森鷗外が留学先のドイツでエリーゼと呼ばれる女性と恋に落ちた話は有名です。そして、そのときのロマンスをもとに書かれた「恋愛系」の作品は、キラリと光る巧みな心理描写が特徴的です。

切なさや愛しさ、どうにもならない憤り。そして計算されつくした見事な文章構成。これらがかけあわさって、非常にクオリティの高い作品に仕上がっています。

「恋愛ならではの心の動きを楽しみたい」「読みごたえのある良作を味わいたい」と思う方に最適です。

「難しい本だと読み切れないかもしれない」「森鷗外に興味を持ったけど、読みやすい作品はあるのかな」と不安を抱える、読書経験が浅い方も少なくないと思います。

このような場合は、短くて読むのが負担にならないような短編集がおすすめです。恋愛がテーマの作品も現代に通ずる部分や共感ポイントが多く、すんなり頭に入ってきます。

ページ数や話の長さや主題、あらすじを知っている作品や、読んだ経験がある作品で選んでみましょう。

「普段から本はまあまあ読んでいる」「じっくり読書を楽しみたい」と思う方は、すこしボリュームのある作品を選んでみましょう。

森鷗外は1巻読みきりの作品が多いイメージですが、中には上・中・下巻の3冊からなる作品もあります。長編だと、より森鷗外が書く日本語の美しさを楽しめます。森鷗外の作品には漢語やドイツ語が登場するため、それらをゆっくり紐解いてみてもいいかもしれません。

本に触れる機会が多い人は、ぜひボリュームを意識した作品選びにチャレンジしてみてください。

森鷗外の作品は、現在でも解釈の議論が白熱しているものが多く存在します。普段から読書が好きで他の文豪の作品もある程度読む人や、本の内容から考察を進めるのが好きな人にはぴったりといえます。

特に生死にかかわるようなテーマで書かれた作品や、歴史モノはその傾向が顕著です。

今回は森鷗外のおすすめの作品について紹介しましたが、いかがでしたか。気になる作品が1つでも見つかりましたか。森鷗外の作品を選ぶときは、自分の読書経験や興味のあるジャンル・タイプをあらかじめ考えてみるといいです。この記事をきっかけに、美しい文章表現が特徴の森鷗外の作品に、ぜひ触れてみてください。