山本周五郎人気作品おすすめランキング13選【直木賞を辞退した鬼才】

山本周五郎は明治生まれの作家であり、時代小説や庶民を主人公とした小説を書いた作家としても有名です。作品は大衆に受け入れられ、直木賞など数々の賞を受賞するも辞退した、異例の鬼才でありました。

映画や大河ドラマ、舞台など現在でも山本周五郎の作品は今でも根強く人気です。その根底には、やはり庶民を題材にした作品が多いからと考えられます。その作品は現代にも通じるような悲劇の物語・人情物語などがありさまざまです。

貧しく生きる庶民に光を当て描写する山本周五郎の作風や魅力は、日本人の中にあるたくましさ、優しさを改めて気づかせてくれます。本記事では、泣ける代表作や山本周五郎短編ベスト10にも含まれるおすすめ作品をご紹介しますので必見です。

ここからは、山本周五郎の代表作について簡潔にまとめています。泣けると話題の作品や、人情を描いた作品などさまざまな内容の作品がありますので、ぜひ参考にしてください。

泣ける友情物語や医師と弟子の物語・藩で闘った人物の物語など、テーマはさまざまながら、どの作品でも「人間のあるべき姿」「人間の強さ」について考えさせられます。

大切なことの本質は、時代を超えても変わりません。あらすじを読んで、人としてなりたい姿に重なった方や興味を持った方は、一度読んでみてください。

山本周五郎作品の多くは、江戸時代を時代背景にしています。江戸時代に生きるさまざまな職種の庶民たちに光を当て、生き生きとした人間模様が描かれているのが特徴です。江戸前期を舞台とした有名な作品としては、『樅の木は残った』があります。

『樅の木は残った』は、1954年1956年まで日本経済新聞にて連載されていた作品です。連載をまとめたものを1958年に講談社から出版され、その翌年毎日新聞社が主催する、優秀な文学や文化に対し賞を贈る毎日出版文化賞を受賞しましたが、山本周五郎は辞退しました。

江戸時代を舞台にしているので、時代物小説が好きな人にもおすすめですが、現代社会にも通じる内容が多いので、ストーリーに引き込まれてどんどん読みたくなる作品ばかりです。義理人情やプライド、弱いものを助けたいといった純粋な気持ちを思い出させてくれる作品が多くあります。

『樅の木は残った』のおすすめポイント

• 江戸時代の仙台藩が舞台で、伊達62万石の安泰を担う原田甲斐の苦悩や信念を描いている
• 原田甲斐が自身の命をかけて仙台藩のために尽力する姿を描いた作品

江戸中期を舞台にした作品は、ドラマにもなった有名な作品『柳橋物語』があります。この『柳橋物語』は、終戦直後から書かれた作品で、戦争体験を元に執筆されたとも言われており有名です。終戦直前、『愛妻日記』に登場する妻となったきよいがすい臓がんで若くして亡くなり、山本周五郎は幼い子供たちの世話などもしなければなくなりました。

戦中日記を書いている間に、『柳橋物語』の構想を考えていたとされるこの作品は、終戦から4年後の昭和24年に、雑誌新青年の一月号に掲載されました。この作品から、山本周五郎は武家を中心とした物語から、下町に生きる人々にスポットを当てた作品を書くようになります。

大きな時代の変換機を乗り越え、2才の幼い我が子を育てながら家族を守り耐え抜いた生活の経験が、その後の作家生活に強い影響を及ぼしたのがこの作品から伺える内容です。

『柳橋物語』のおすすめポイント

• 苦難に当たっても力強く生きようとする人々の姿を描いている

• 生きるといった難しくも大切な事を改めて考えさせられる作品

『髪かざり』は『日本婦道記』と同じ時期に書かれた短編集です。『日本婦道記』が連載されていた頃に書かれていたもので、『日本婦道記』から漏れてしまった作品が収録されています。漏れたとはいえ、作品の素晴らしさは『日本婦道記』に劣りません。

江戸時代の武将真田信之の妻である松子が、城を守りぬこうとする『忍緒』や、亡くなった父親の事業を引き継ぐのを決めた娘の物語である表題の『髪かざり』など、こちらも女性にフォーカスした小説となっていて、全編17話すべて短編で読みやすいのでおすすめです。

『髪かざり』のおすすめポイント

• 亡き父の仕事を引き継ごうとする娘の視点で描かれている

『日本婦道記』のおすすめポイント

• 武家社会の中で、家族に寄り添い生きた女性たちを描いた作品
• 人への気遣いや思いやり、苦悩に負けない忍耐力、家族を健気に支え続ける女性たちを美しく描いている

山本周五郎がこの世に誕生してから110年経ったあとに書籍化された、妻と家族との生活や、作家として芽が出ずに苦悩する日々などを綴った日記です。1930年から1941年までの11年間の日記が収められています。

1930年山本周五郎は27才となり、作家としてデビューしてから5年が経ちました。なかなか自分の思うような作品を書けず、自暴自棄になった時もあったそうです。結婚後には講談社で時代小説を執筆したり、当時の人気雑誌キングに執筆したりなど仕事が舞い込むようになります。

妻になる人と出会い結婚し、家族を持つようになってからは、ますます小説家として執筆に情熱をかたむけるようになるのが垣間見えるのがポイントです。妻や家族への愛と、自分のなすべき仕事を見出すまでの若き日の山本周五郎の思いなどが赤裸々に綴られています。

『青べか物語』の元にもなった浦安での生活を綴った日記や、エッセイ、対談がまとめられた本になっています。貴重な山本周五郎自身の思考を知れる上に、山本周五郎の人となりがわかる本にもなっている内容です。

昭和3年山本周五郎が25才の頃からこの日記は始まります。当時山本周五郎は、日本魂社の伝統文化や思想を広めるための雑誌社に勤めており、その当時の様子も垣間見られるのが特徴です。

『愛妻日記』に登場する最初の妻となったきよいさんと婚約し、結婚への意気込みもこの日記から伝わってきます。日常の出来事や心情をありのまま書いていて、小説のように長文がないため、とても読みやすいためおすすめです。

第二次世界大戦中の山本周五郎の生活の様子などを記した日記で、1941年12月8日から1945年2月4日までの日記がまとめられています。どう戦争と向き合ったのか、そして一家の柱である山本周五郎の思いなどが綴られているのが特徴です。

戦争に翻弄された自身の作家生活など、戦争を知らずに育った世代にも生々しく伝わってくる日記になっています。戦時中でも仕事を休まず、ますます仕事に打ち込もうとする描写は、私たちの心を打つ人間の強さが伺える内容です。

小説家として、一人の男として、一家の主として、山本周五郎は戦時中どう感じ、どう暮らし、どう作家としての人生を生きたのか。空襲の恐怖にさらされながらも、日々自身と向き合い家族を守り生き抜いた、山本周五郎の生き様がこの本から読み取れます。

山本周五郎の小説の多くが映画化され、いまもなお多くの人に愛される作品がたくさんあります。映画では、『日日平安』が原作の黒澤明監督の『椿三十郎』や、『赤ひげ診療譚』が原作の同じく黒澤明監督の『赤ひげ』などが有名です。

最近では、1962年に公開された『椿三十郎』のリメイクが2007年に公開されています。他にも、人気監督である三池崇史監督の泣ける物語『SABUさぶ（青空文庫）』や、『町奉行日記』を元にした『どら平太』など、全部で30作以上映画化されるほど評判です。

昭和から平成にかけて長く愛される山本周五郎の作品は、時代が変わっても人々の胸に感動と温かさをまっすぐに伝えてくれます。

テレビドラマでも、山本周五郎の作品はたくさん放送されています。江戸時代を舞台にした原作や短編小説から、多くテレビドラマ化されており人気です。主に『人情裏長屋』や『柳橋物語』・『町奉行日記』などがドラマになっています。

2017年の4月から9月まで、山本周五郎時代劇武士の魂と題して、さまざまな短編小説を月に2回ずつ放送していました。一話ごとの完結ドラマなので、山本周五郎ファンはもちろん、山本周五郎を知らない人からも好評です。

映画よりも短い時間なのと、小説の中の人間模様がわかりやすいため、いきなり小説を読むのは抵抗がある人はドラマから入ってみるのもおすすめします。

10作以上もの作品が舞台化されており、宝塚歌劇団でも山本周五郎の小説を元とした舞台を公演していました。原作『柳橋物語』と『ひとでなし』が元になった『川霧の橋』や、原作『さぶ』が元となった『白い朝』、原作『落ち葉のとなり』が元になった『落ち葉のしらべ』などがあります。

華やかな宝塚の舞台でも、山本周五郎の作品が数多く演じられてきました。また、大御所俳優が数々輩出されてきた劇団俳優座でも、山本周五郎の作品である『赤ひげ診療譚』が『赤ひげ』といったタイトルで演じられ、舞台の世界でも山本周五郎の作品は根強い人気となっています。

山本周五郎は数多くの短編を残し、現在では人気の作品を集めた傑作集も多数販売されています。小説を読む習慣がないと方や、手っ取り早く面白い作品を読みたい方におすすめです。

多いものでは、1冊で10篇近くの作品を楽しめます。途中で読むのをやめても後で混乱しないので、忙しくて本を読む時間が取れない方にもおすすめです。

山本周五郎の作品は、YouTubeなどの動画サイトで無料で朗読を楽しめます。また、CDやオーディオブックなどでも朗読可能です。本を読むのが苦手な方や、家事などの作業中などに聞きたい方におすすめですので、ぜひチェックしてみてくださいね。

山本周五郎のおすすめ人気作品ランキングを紹介してきましたが、いかがでしたか？小説の中の人間模様や光景をありありと伝えてくれ、読み手を楽しませてくれる作品ばかりでしたね。映画などの映像作品もたくさんありますので、ぜひ文豪山本周五郎の作品に触れてみてくださいね。