安部公房の人気おすすめ作品ランキング10選｜代表作や短編作品も紹介

安部公房は1924年3月7日に東京で生まれ、少年期は満州で過ごします。学生時代は多くの小説を読む文学少年であったと同時に、数学が得意だったそうです。後に日本に戻り東京帝国大学医学部医学科を卒業しています。

影響を受けた人物は、ライナー・マリア・リルケやマルティン・ハイデガー、フランツ・カフカなどです。また、「芥川賞」を受賞した「壁」は、ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」から発想を得ています。

作品の特徴は、なんといってもシュルレアリスムです。シュルレアリスムとは、現実では起こりにくい夢のようなものを美術や文学によって表現する芸術運動。

物語の中で、常識を超えた出来事が次々と主人公を襲います。抵抗しても、一向に解決には向かわず、むしろ事態はより複雑になっていきます。一体どうしてそうなっちゃうの？と思わず突っ込みを入れてしまいたくなるような、不条理で奇妙な世界観が安部公房作品の魅力です。

なぜ書くかと問われ、安部公房は『作家にとって創作は生の一形式であり、単なる選択された結果ではありえない。「なぜ」という問いが、「生」の構造の一部であり、生きる理由に解答がありえないように、書く行為にも理由などあるはずがない。』と答えています。作者にとって文章を書くのは、書くか書かないかの選択肢の前に至極当たり前だったのです。

安部公房の作品はフランスの作家、フランツ・カフカの不条理小説の影響を強く受けています。しかし、作品の中にはただの模倣ではなく自身の独創性がはっきりと感じられます。

不条理とは、筋道が通らなかったり道理に合わないのを意味します。作中で主人公は突然、自分ではどうにもできない目に遭ってしまいます。周りに助けを求めても道理に合わない受け答えをされてまったく解決できず、ただただそれを受け入れるしかないのです。

読み進めていくうちに、気付けば不可解な世界にのみ込まれています。作者が紡ぎ出す一見ちぐはぐで非常識的な物語に翻弄されながらも、もう一度読みたいと思わされ、中毒性のある小説といえます。

初の戯曲作を発表してからは、小説と合わせて精力的に戯曲も書いていきます。多彩な才能を活かし、1973年には「安部公房スタジオ」を起ち上げ、多くの舞台演出と俳優育成に取り組みます。

渋谷西武劇場を拠点として活動し、海外での公演も果たします。セントルイス・ワシントン・ニューヨーク・シカゴ・デンバーで発表された作品は、斬新な演劇手法で反響を呼びました。　

戯曲は登場人物の会話と簡単な情景描写で書かれており、スイスイと文章を読みやすいので読むのに時間がかかってしまう人にはおすすめです。　

東京帝国大学医学部医学科卒の安部公房は、コンピューターや遺伝子工学に理解を示しSF小説も生み出しています。未来を予言できる機械、復讐のために人間を酷使する機械を発明する機械技師、脚本家の前に現れた火星人ーーどんな物語なのか妄想が膨らみます。

当時では人工知能(AI)や誰もがコンピューターを所持するのは、あまりにも現実味のない話として受け入れられていませんでした。今やこれらは現実となり、ますます発展を遂げています。古い考えに固執せず常に先を見る安部公房は、とても前衛的な考えを持っていたのです。ワードプロセッサーやシンセサイザーをいち早く購入するといった新しいもの好きの一面もありました。

随筆を読むと、文学を超えた国家・哲学・科学・言語やさまざまな分野に幅広い知識を持った安部公房の頭の中が垣間見えます。

安部公房は実に多くの受賞歴を持つ作家です。文学賞では有名な芥川賞を受賞してます。急逝によって実現はしませんでしたが、ノーベル文学賞の有力候補だったと言われています。国内、海外共に高い評価を得ています。海外では、特に東欧での人気が強いそうです。

また、小説だけではなく戯曲でも多数の賞を取っているため、演劇にも力を注いでいたと窺えます。しっかりと評価された受賞作を読んで自分なりの感想や意見を持ち、小説に対する評価力も高めていきましょう。

安部公房の作品の魅力は、まるで夢の中にいるような非現実的で不思議な世界観です。シュルレアリスム小説を初めて手にする人は、よく分からないと戸惑ってしまうかもしれません。

そんな時は、短編から読んでみてください。短いので比較的ラクに作品の雰囲気に触れられます。丁寧に繰り返し読むのも適しているので、お気に入りの作品を見つけるのも楽しいと思います。

突然奇妙な出来事が起きたり、不思議な人物に出会ったり、これは現実なのか夢の中なのか、決して飽きない物語がいくつも詰まった短編集で安部公房ワールドを堪能してください。

短編で作品に触れたら、是非長編にもチャレンジしてほしいと思います。日本国内のみならず海外での評価も高いものがあり、読む価値が十分にあります。また安部公房の作品は前衛的な作風で、現代に通じる要素をたくさん含んでいます。

都会における人間の孤独、科学技術の発達による人工知能(AI)の可能性、地球温暖化などは今でも身近に感じる事柄です。まるで安部公房自身が未来を予測していたかのように、耳馴染みのキーワードが次々と出てきます。不思議と今読んでも、まったく古さを感じないのに驚きます。

全部を理解しようとすると難解に感じてしまうので、肩の力を抜いて現代と結びつけてみたりしながら読んでみてください。

映像化・舞台化もされている安部公房作品。映像企画はあがったものの未制作になっている作品もいくつかあります。原作と合わせてどちらにも触れて、比較してみるのも面白いのでおすすめです。

映像化されたテレビドラマは16本、映画は6本です。テレビドラマでは、「人間そっくり」に登場する謎の火星人役を田中邦衛、「燃えつきた地図」の主人公を勝新太郎が演じるなど、なかなかいい配役です。

6本のうち3本の映画は、勅使河原宏監督が撮りました。ドキュメンタリータッチで作られたこれらの映画は、世界的にも評価されました。映画の脚本は小説とは違うラストになっているものもあります。また、安部公房本人が出演していたりするので、ぜひ映画も見てみてください。

自身で戯曲を書き、劇団を起ち上げてしまうほど精力的に活動していた作者。作者にとって、演劇活動は欠かせない仕事のうちの柱の一つとなりました。今もなおその作品の素晴らしさは色褪せず、舞台化され続けています。安部公房の作品に惹かれた現代の演出家により舞台化され、いつまでも受け継がれていってほしいものです。

小説にもいえますが、何十年も前に書かれた作品にもかかわらず今上演しても古い感じがしません。それは安部公房の類まれなる先を見通す力で作り上げられた作品だからです。現代の演出家たちはそれに驚かされています。

阿部公房の代表作と言われているのが、「失踪三部作」。『砂の女』『他人の顔』『燃え尽きた地図』の3作を指しますが、関連はありません。登場人物が失踪する共通点から、読者のなかでそのように呼ばれています。それぞれの作品を紹介します。

• 『砂の女』：1962年発表の長編小説。ある男が砂穴の家に閉じ込められる物語
• 『他人の顔』：1964年発表の長編小説。事故で顔にやけどを負った主人公の物語
• 『燃え尽きた地図』：1967年発表の長編小説。失踪したサラリーマンを追う探偵の物語

阿部公房に似た作家としてよく名前があがるのが、フランツカフカ。フランツカフカはチェコ出身の作家です。阿部公房との共通点は、シュルレアリスムと不条理な世界観。阿部公房が好きな方は、フランツカフカの作品もきっと気に入ります。ここではフランツカフカのおすすめ作品を紹介します。

• 『変身』：1915年に発表された中編小説。実存主義・不条理文学として知られている
• 『審判』：1915年に発表された長編小説。理由がわからないまま裁判で有罪となる主人公の物語
• 『失踪者』：1913年に第一章のみ発表。死後の1927年に再度編集され発行。アメリカの放浪記で未完作
• 『城』：1926年に発表された長編小説。死後に発刊された未完作

ここまで安部公房のおすすめ作品人気ランキング10選を紹介しました。シュルレアリスム小説と聞くと難解なイメージを持ってしまいそうですが、触れてみるとその奥深い面白さに気付けるでしょう。まずはこちらでご紹介した中から、気になった作品を読んでみてください。