【2023】山崎豊子おすすめ15選｜代表作やドラマ・映画化された作品も！

山崎豊子の小説の魅力は、徹底した取材に基づいた時代設定・舞台設定の上に、人間臭い登場人物たちを生き生きと描き、人間とはすごいものだなと思わせる作風にあります。難しいテーマの長編でも一気に読ませる筆力があり、読者を作品の中に引き込んで魅了するのが山崎作品の特徴です。

初期の作品では大阪を舞台に、市井の人々の生き方を描いています。後に大病院の裏側をテーマとし、大ヒットした『白い巨塔』など、次第にその目は社会問題に向けられ、悪や正義をえぐりだした作品が多くなります。

この記事では、山崎豊子の人気おすすめ作品を中心に、映像化された作品のキャストや、直木賞などの受賞作品、作品の選び方を取り上げています。山崎作品が好きな人は、参考にしてみてください。

山崎豊子は1924年、大阪市生まれです。大学を卒業後、毎日新聞に就職します。仕事と並行して小説を書き、1957年には処女作『暖簾』を刊行、翌年には『花のれん』で直木賞を受賞しました。

毎日新聞を退社した山崎豊子は、大作を次々と発表し、ベストセラー作家になりました。1993年には印税を使って「山崎豊子文化財団」を設立、中国残留孤児を支援します。2013年、『約束の海』の執筆中に享年88歳で逝去しました。死因は心不全とされています。

山崎豊子は、デビュー作『暖簾』から、絶筆となった『約束の海』まで、生涯で20作以上の小説を発表しています。どの作品を読むか迷う人もいるでしょう。出版年代や時代設定など、山崎作品の選び方をご紹介します。

山崎豊子の作品は、出版した年代によってテーマが変わっていきます。1950年代の作品、1960年代前半の作品、1960年代後半からの作品で、取り上げる主題に変遷が見られます。ここではそれぞれの年代の作品のテーマを解説します。

■出版年代と作品名

1950年代に発表した4作は、明治から大正・昭和の大阪を舞台にした、あきんど達の生き様がテーマです。知恵と才覚で激動の時代を乗り切り、生き抜いて身を立てていく姿を描いています。中でも『花のれん』は直木賞を、『ぼんち』は大阪府芸術賞を受賞しました。

山崎作品の中では比較的ボリュームが少ないのが特徴です。

1960年代前半には、『女の勲章』『女系家族』『花紋』といった、女性のたおやかさ・醜さ・力強さをあぶりだした作品が続きます。1950年代の作品と同じく、主人公たちはみな大阪にルーツを持っています。

絶望の末死を選ぶ者、大きな力には抗えず敗北を喫する者と、どこか後味の悪いエピソードで物語は幕を閉じます。

1960年代後半からは、大阪の商人や女性たちから目を転じ、社会問題に着目した作品が多くなります。何度も映画やドラマで映像化された代表作の『白い巨塔』も60年代後半に書かれた小説です。

70年代から90年代にかけて「戦争三部作」と呼ばれる作品を次々と手掛けます。その後も社会に斬り込む小説を発表し続けたのでした。

初期の山崎作品は、ほとんどが明治から大正、戦後を舞台としています。1965年（昭和40年）以降は、『白い巨塔』『仮装集団』『華麗なる一族』など、昭和30年代を舞台とした作品が多くなりました。

その後は戦中・戦後が背景となった『不毛地帯』などを発表し、『沈まぬ太陽』からは現代がテーマになっています。

山崎豊子が発表した小説は、「直木賞」をはじめ、数多くの賞を受賞しています。受賞した作品と、賞の内容を簡単にご紹介します。賞に選ばれた作品は、ほぼ間違いなくおもしろい作品なのでチェックしてみてください。

「直木賞」は、正しくは「直木三十五賞」といい、1935年に始まった、大衆に向けた長編作品や短編集が対象の文学賞です。山崎豊子は『花のれん』で、1958年に第39回直木賞を受賞しました。

選考にあたっては、「シロウトくさい」などと酷評した審査員もいましたが、おおむね評判がよく、めでたく受賞となりました。

1959年、山崎豊子は『週刊新潮』に連載した『ぼんち』で、「大阪府芸術賞」を受賞しました。大阪府芸術賞は、大阪の文化の振興に貢献した、個人や団体の業績を称える目的で設立された賞です。

言うまでもなく『ぼんち』は、大阪が舞台になっています。商家に生まれた主人公が、きれいな遊び方をする様が描かれた作品です。

「婦人公論読者賞」は、『婦人公論』に掲載され、読者の人気投票で最も多く票を集めた記事に贈られる賞です。1962年から1970年まで行われ、高峰秀子や大宅壮一らが審査委員を務めました。

第1回は有吉佐和子が受賞しており、山崎豊子は1963年に『花紋』、5年後の1968年に『花宴』で2度受賞しています。

1990年、「第52回文藝春秋読者賞」を『大地の子』が受賞しました。文藝春秋読者賞は、最も読者に支持を受けた記事に贈られる賞で、掲載記事の中から選ばれます。過去には文壇の大物が受賞しています。

『大地の子』は、中国残留孤児を取り上げた社会派の小説で、『文藝春秋』で4年間連載された上巻・中巻・下巻からなる長編です。

1991年には文藝春秋読者賞を受賞した『大地の子』で、「第39回菊池寛賞」を受賞します。菊池寛賞は映画や文芸作品などに尽力した個人や団体に、日本文学振興会から贈られる賞です。

1953年に始まった菊池寛賞の歴代受賞者は、吉川英治・川端康成・ドナルドキーン・司馬遼太郎など、そうそうたるメンバーが揃っています。

主催が毎日新聞、特別協力が大日本印刷株式会社の「毎日出版文化賞」は、優れた出版物に贈られます。山崎豊子は2009年に『運命の人』で特別賞を受賞しました。

『運命の人』は全4巻の大長編で、毎日新聞社の西山太吉記者らが、沖縄返還の機密を国会議員にリークした「西山事件」をテーマとして取り上げた小説です。

山崎豊子は20作品以上の短編・長編小説を発表しています。大半の作品がベストセラーになり、人気を受けて映像化されました。この章では、映像化された作品と、中でも繰り返し映画やドラマになった作品をご紹介します。

映画やドラマなど、映像化された作品は、枚挙にいとまがないくらい多くあります。デビュー作の『暖簾』をはじめ、『白い巨塔』『華麗なる一族』『沈まぬ太陽』など次々と映像化されました。

映画にもドラマにもなっていないのは、『仮装集団』・『花宴』・中短編集の『ムッシュ・クラタ』・絶筆の『約束の海』の4作品のみです。

山崎作品の中でも『白い巨塔』・『華麗なる一族』は、何度も繰り返し映像化されています。『白い巨塔』の主人公・財前五郎の役を田宮二郎・唐沢寿明・岡田准一が演じました。

『華麗なる一族』は万俵大介役に山村聡・北大路欣也・中井貴一が起用されています。この2作品は、時代を超えて受け継がれる名作と言えるでしょう。

山崎豊子はたびたび盗用を疑われました。『花宴』ではレマルクの『凱旋門』、さらに日本の作家の2作品を盗用していると判明し、雑誌『婦人公論』への連載だけで、単行本は出版されませんでした。

そのほかにも『不毛地帯』と『大地の子』に盗用疑惑があり、裁判にも発展したこともありましたが、無事に出版されました。

山崎豊子の作品とその魅力や、プロフィールなどについてご紹介しました。山崎作品の特徴は、一見難しそうな社会問題をテーマにしていますが、人間ドラマに引き上げて、読者をぐいぐい引っ張って目をそらさせない点にあります。とっつきにくいと感じてもぜひ読んでみてください。夢中になって読みふけることでしょう。